一戸建ての売却/一戸建ての売却に関する法制度・税制

マイホームを売却したときの税金の基礎知識

一生に一度のつもりで購入した住宅も、いつかは売却する日がくるかもしれません。マイホームを売却したときの税金について、ぜひ知っておきたい基本的なポイントをまとめました。(2017年改訂版、初出:2005年12月)

執筆者:平野 雅之


一戸建て住宅

ずっと住むつもりで購入した住宅でも、いつか売る日がやってくる?

一所懸命に物件探しをしてようやく手に入れた住宅も、いつかは手放す日がくるかもしれません。よりよい住宅へ買換える場合だけでなく、やむを得ない事情によって売却する場合もあるでしょう。

住宅を購入したときや所有しているときだけではなく、売却するときにも税金のことを忘れるわけにはいきません。

今回はマイホーム(居住用財産)を売却したときの税金について、ぜひ知っておきたい基本的なポイントをまとめました。


居住用財産の譲渡には各種の特例がある

個人である所有者自身が住んでいたマイホーム(現に住んでいる土地・家屋、または、住まなくなってから3年目の年末までの土地・家屋)のことを税務上では「居住用財産」といい、これを譲渡したときには条件に応じて各種の特例が用意されています。

譲渡によって利益が生じたときは「居住用財産を売却した場合の3,000万円の特別控除の特例」「所有期間が10年超の居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例」「特定の居住用財産を売却した場合の買換えの特例」があります。

また、譲渡によって損失が生じたときは「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」があります。

居住用財産を譲渡した場合の特例

特例の内容および適用要件などについては、それぞれの解説記事をご参照ください。この記事の最後にリンクがあります。


所有期間は譲渡した年の1月1日時点で判断する

マンション

売却したときの税金は所有期間で大きく変わる

居住用財産をはじめとする不動産の譲渡では、所有期間が5年以下のものを短期譲渡、5年を超えるものを長期譲渡とし、さらに10年以下か10年を超えるかによって特例の適用関係が異なる場合もあります。

これらの所有期間はいずれも譲渡した年の「1月1日時点における年数」で判断します。

たとえば、2012年1月1日に取得した土地・建物を2017年12月31日に譲渡した場合に、正味の所有期間はちょうど6年(正確には1日不足)ですが、税務上は「5年以下」の短期譲渡として取り扱われます。

したがって、2017年(平成29年)中に譲渡をする場合に、「所有期間が10年を超えるもの」は2006年(平成18年)12月31日以前に取得した土地・建物が該当し、「所有期間が5年を超えるもの」は2011年(平成23年)12月31日以前に取得した土地・建物が該当します。

ただし、「取得の日」と「譲渡の日」については、次のように柔軟な対応がなされています。所有期間が5年前後または10年前後で、年をまたいで契約や引き渡しがあった場合などには、しっかりと確認するようにしましょう。


「取得の日」と「譲渡の日」は選択できる

原則として、「取得の日」とは自分がその土地・建物の引き渡しを受けた日であり、同じく「譲渡の日」とはその土地・建物を相手側に引き渡した日です。

ところで、不動産の売買契約において、契約締結日と引き渡し日が異なる(売買契約締結後、引き渡しまで1~3か月程度を要する)場合が多いことはご存知でしょう。

このとき、税務申告上では売買契約締結日を「取得の日」または「譲渡の日」とすることも認められています。さらに、「取得の日」は売買契約締結日、「譲渡の日」は引き渡し日といった選択をすることも可能です。

なお、ここでの「契約締結日」とは、厳密にいうと売買契約の効力が発生した日であり、停止条件付契約(条件の成就によって契約成立を認めるもの)や、売買契約について第三者や監督官庁の承諾を要件とするものなどについては、必ずしも売買契約締結日とはなりません。

なお、住宅ローン特約付の売買契約の場合には、契約の締結と同時にその効力が発生します。

たとえば、2011年12月に購入の売買契約を締結して引き渡しを受けたのが2012年1月、その土地・建物の売却について2016年12月に売買契約を締結して2017年1月に引き渡したケースで考えてみましょう。

「引き渡し~引き渡し」ベースと「契約~契約」ベースでは、どちらも5年以下で短期譲渡として扱われますが、「取得の日」を契約ベース、「譲渡の日」を引き渡しベースにすれば長期譲渡とすることができます。

ただし、購入にかかる売買契約(または建築にかかる請負契約)の締結時点で建築工事中(または未着工)だった建物については、「取得の日」に契約ベースを選択することができず、あくまでも工事が完了した日以後でなければなりません。

また、贈与相続または遺贈によって取得した土地・建物については、自分が取得した日ではなく、原則として以前の所有者が取得した日を引き継ぐことになっています。


建物の減価償却と取得価額、取得費と譲渡費用…次ページへ

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