一戸建ての売却/一戸建ての売却に関する法制度・税制

マイホームの売却と3,000万円の特別控除

個人がマイホームを売却したときに「3,000万円の特別控除」の特例が使えれば、3,000万円以内の所得には課税されません。売却で利益が出そうなときには、その適用要件など特例の内容をしっかりと理解しておきましょう。(2017年改訂版、初出:2005年12月)

執筆者:平野 雅之


個人がマイホーム(居住用財産)を売却(譲渡)したときに利益(譲渡益)が生じれば、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最高3,000万円までを控除することができます。

売却などによる利益が3,000万円以内なら、その譲渡所得に対して所得税が課税されない特例ですが、今回はこの「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」について詳しくみておくことにしましょう。これから住宅を購入する人も、ぜひ知っておきたい特例です。

なお、2016年度(平成28年度)の税制改正により、相続した一定の空き家を譲渡する場合における3,000万円控除の特例がスタートしています。こちらの特例の内容については ≪平成28年度 住宅税制改正総まとめ≫ をご覧ください。


実際に住んでいた家屋であることが前提

歌舞伎のイラスト

かつては主役級だったこの特例も、今はちょっぴり影が薄い!?

3,000万円の特別控除の特例では、譲渡した居住用財産の所有期間の長短は問われませんが、原則として実際に所有者自身が生活の拠点として利用していた家屋(その敷地を含む)の譲渡であることが前提です。

自宅の建て替え期間中の仮住まいやその他の理由により、一時的な利用のために入居した家屋は特例の対象とならないほか、たとえその家屋に住民票を移していても、実際に住んだことがなければこの特例を受けることができません。

特例の適用を受ける目的でのみ入居したと認められる場合も同様なほか、趣味や娯楽、保養のために所有する別荘なども特例の対象外です。

店舗や事務所などとの併用住宅の場合には、居住用部分と他の部分の面積割合によって譲渡所得を按分し、居住用部分についてのみこの特例を適用することができます。

ただし、居住用部分の面積がおおむね9割以上の場合には、そのすべてを居住用財産として特例を適用できることになっています。

また、買換えの特例の場合とは違い、3,000万円の特別控除の特例では譲渡後にどうしたのかを問われませんから、それまでの住宅を売却した後に賃貸住宅へ住み替えても特例の適用を受けられます。

なお、譲渡所得が3,000万円未満だったときに、控除しきれなかった残額分を他の所得から控除できるわけではありません。譲渡所得が3,000万円に満たなければ、あくまでも実際の譲渡所得金額が控除額の上限となります。

さらに、たとえば4,000万円で購入したマイホームを3,500万円で売っても、譲渡所得が生じるケースもありますから注意しなければなりません。譲渡所得についての考え方は ≪マイホームを売却したときの税金の基礎知識≫ の2ページ目をご参照ください。


3,000万円の特別控除の特例の適用要件

3,000万円の特別控除の特例を適用するための要件は以下のとおりです。

所有者が自ら居住していた家屋を譲渡するか、または家屋とともにその敷地や借地権を譲渡すること
 
  居住しなくなった日から3年目の年の12月31日までに家屋を譲渡することが必要です。その間に家屋を第三者に賃貸していてもこの特例を適用することができます。
 
  対象の家屋が災害により滅失した場合には、その災害があった日から3年目の年の12月31日までに、その敷地を譲渡しなければなりません。
 
  災害による滅失以外の理由で家屋を取り壊した場合(敷地を譲渡するために家屋を取り壊した場合)には、居住しなくなってから3年目の年の12月31日までの譲渡であるのと同時に、家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地の譲渡に関する契約を締結すること、かつ、その敷地を貸し付けたり他の用途に利用したりしていないことが要件となります。
 
  単身赴任や転地療養などの事由によって所有者が家族と離れて他の家屋に居住している場合でも、その事由が解消すれば所有する家屋に戻るものと認められるときには、所有者自身がその家屋に居住しているものとみなされます。

ただし、別居などにより複数の居住用財産を所有することとなった場合には、所有者自身が主として居住している家屋およびその敷地のみが特例の対象となります。
 
  所有者自身が住まなくなってからも、生計を一にする親族が引き続き居住しており(または生計を一にする親族が住まなくなってから1年以内であり)、所有者自身が現に住んでいる家屋は本人の所有ではないこと、所有者自身が住まなくなった日以降において他の課税の特例(居住用財産の譲渡に関する特例)を受けていないことなど一定の要件を満たしていれば、本人が居住しなくなってから3年以上が経過していてもこの特例を適用することができます。
 
  敷地の一部のみの譲渡、あるいは家屋を所有したままでその敷地のみを譲渡した場合は、特例の対象となりません。
 
譲渡する相手が、配偶者や直系血族、同居する親族、生計を一にする親族、内縁関係者およびその親族、特殊な関係のある法人など、特別な関係者ではないこと
 
  離婚に伴う財産分与(時価により譲渡したものとみなされる)の場合は、離婚後の資産譲渡であり「配偶者に対する譲渡」には該当しないため、この特例を適用することができます。
 
譲渡した居住用財産について、収用交換等の特別控除など他の課税特例の適用を受けていないこと
 
  居住用財産の買換え特例などとは、いずれかの選択適用となりますが、譲渡所得が3,000万円以下であればこの「3,000万円の特別控除」を適用し、3,000万円を超えるときに「買換え特例」か「3,000万円の特別控除」のどちらか有利なほうを試算して選ぶようにします。
 
その居住用財産を譲渡した年の所得について、住宅ローン控除の適用を受けないこと
 
  3,000万円の特別控除の特例の適用を受けた翌年または翌々年に、新しく取得した住宅での居住を開始した場合には、住宅ローン控除の適用が受けられません。
 
  新しい居住用財産を先に取得して住宅ローン控除の適用を受けた後、その入居年の翌々年までに従前の居住用財産を譲渡して3,000万円の特別控除の適用を受けるときは、修正申告等をしたうえで、住宅ローン控除がなかった場合に相当する所得税を納付しなければなりません。
 
  また、それ以降の期間についても住宅ローン控除の適用を受けられないことになります。
 
譲渡した年の前年および前々年に同じ特例、または居住用財産の買換えの特例の適用を受けていないこと
 
  3年に1度までの適用となります。


共有の場合における適用関係

共有の場合には、家屋とその敷地の共有者それぞれについて要件を判断し、別々に特例を適用することができます。たとえば夫婦の共有になっている場合、譲渡所得をその持分で按分したうえで最大6,000万円までを控除できます。

同様に、同居する4人の共有であれば最大12,000万円までを控除できますが、それだけの譲渡所得がなければどんなに控除枠が大きくなっても意味はないでしょう。

たとえば譲渡所得が5,000万円あり、夫の持分が5分の4(譲渡所得4,000万円)で、妻の持分が5分の1(譲渡所得1,000万円)だったとすれば、妻の税額は0円になるものの、夫は1,000万円分(4,000万円-3,000万円)に対して課税されることになります。

この場合、家屋の持分割合と敷地の持分割合が異なっていても、それに応じて譲渡所得の按分計算を行なえばよいのですが、家屋の持分がない場合(敷地のみが共有の場合)には、原則として家屋の持分がない人に対してこの特例を適用することができません。

ただし、土地のみを所有(共有または単独所有)する人が、特例が適用される家屋の所有者と生計を一にする同居親族であり、その家屋とともに敷地を譲渡した場合には、家屋の所有者から控除し切れなかった残額分に限りこの特例を適用することができます。

たとえば、家屋の所有者の譲渡所得が2,000万円だった場合、残りの1,000万円(特例額3,000万円-家屋所有者の実際の控除額2,000万円)を土地の所有者の譲渡所得から控除できることになります。


3,000万円の特別控除の特例の適用には確定申告が必要

3,000万円の特別控除の特例を適用するためには、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告をしなければなりません。このとき、確定申告書には特例の適用を受ける旨を記載することが必要です。

【確定申告書の添付書類】

譲渡所得の内訳書(計算明細書)〔土地・建物用〕
 
住民票の写し、または住民票除票の写し
 
  居住用財産を譲渡した日から2か月を経過した後に、譲渡した居住用財産の所在地を管轄する市区町村から交付を受けたもの

なお、住民票の写しなどを添付することができない場合などには、それに代えて次の書類を添付します。

戸籍の附票の写し
 
  居住用財産を譲渡した日から2か月を経過した後に交付を受けたもの
 
譲渡した居住用財産の所在地を管轄する市区町村の住民基本台帳に登載されていなかった事情を詳しく記載した書類
 
譲渡した居住用財産に住んでいた事実を明らかにする書類
 
  郵便物、公共料金の領収証、その他客観的に証明できるもの


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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