物件情報の大半は、ほぼすべての不動産業者によって共有されており、同じ条件で複数の不動産業者に物件探しを依頼すれば、必然的に同じ物件が紹介される可能性は高くなります。だからといって、複数の不動産業者に依頼することが悪いわけではありません。
また、物件の図面や資料などを渡されるだけであれば、複数の業者から同じ物件を紹介されたとしてもトラブルが生じる余地はないでしょう。
何らかの問題が生じるのは、いずれかの不動産業者によって実際に物件の案内(業者に連れられて物件の内見などをすること)がされてからのことであり、ご質問のような事態に陥る可能性があるのは、案内をされた物件が具体的に購入検討の俎上にあがってからのことです。
購入を検討する物件を絞り込んだ後は、結論を出すまであまり「浮気」をしないことも大切
このとき、案内をする物件(行き先)を説明しないままで、とりあえずお客様を会社の車に乗せ、担当者のペースであちこち見せて回るスタイルの営業をする不動産業者もあります。
そのような場合に、物件の現地へ着くまでは気付かなかったものの、いざ着いてみたところ「既に見たことのある物件だった」という、ご質問のようなケースも生じやすいのです。
このような懸念があるときには、まず、見る予定となっているすべての物件を事前に明らかにするように依頼してください。
それにも応じないままで「まぁまぁ、そういわずに」などと強引に連れ出そうとするような営業担当者であれば、決して信頼のおける相手ではないでしょうから、案内のすべてを断っても何ら問題はありません。
それでも断りきれずに案内に連れ出されてしまったのであれば、見せられたどの物件にも興味を示さないようにするべきです。
しかし、それほど単純な事例ばかりではありません。同じ物件を先に見せたA社の営業担当者よりも、後から紹介したB社の営業担当者のほうが信頼できそうだというケースも往々にしてあるでしょう。
また、ときには買主のほうからB社に対して「A社からこんな物件を紹介されたんだけど、A社は信頼できないからB社のほうで何とかならない?」と持ちかけるケースもあり得ます。
このようなときには(ここでは具体的に書きませんが)後で話がこじれないように、B社と買主とでうまく立ち回るしかありません。
ただし、先にA社からその物件を見せられたときに売主と買主が会っていれば発覚しやすいですし、A社そのものが売主であればA社に知られずに購入すること自体ができません。A社が売主のときに、わざわざ媒介手数料を払ってまでB社を通すこともないでしょうが……。A社が売主から直接の売却依頼(専任媒介契約、専属専任媒介契約)を受けた業者である場合にもいろいろと難しいことになります。
また、たとえば先に物件を案内して見せたA社では4,000万円となっていたものが、後から紹介したB社では3,800万円になっていた、などというケースも考えられます。
このように異なる価格で物件を紹介すれば、前述したような「抜き行為」にはあたらないと考える不動産業者もあります。それでも「抜きは抜き」と考える業者もあって非常に曖昧な部分ですが、いずれにせよ先の業者がその物件を「見せている」ことが前提となります。
同じ物件でありながら紹介する価格が異なるのは、ちょうど売主が値下げに踏み切ったタイミングだったときもあれば、B社が(売主との価格交渉幅を見込んで)勝手に値付けを変えて紹介していることも考えられないわけではありません。本当のところがどうなのか、買主の立場からは判断が難しいことでしょう。
このようなとき、買主としては安いほうの業者に頼みたくなるでしょうが、冷静に考えれば売主は同じです。後から紹介したB社の値下げ価格が正当なものであれば、A社を通しても同様に安くできるのが普通です。
したがって、紹介された価格の違いにとらわれることなく、A社とB社のどちらに頼むのかをよく考えて判断すべきです。しかし、ご質問のように媒介手数料の値引きで駆け引きされると、どちらに頼むのが良いのか悩んでしまうでしょう。
いずれにせよ、ある程度気に入った物件が見つかって具体的な検討を始めた段階では、他社からの誘いがあっても毅然とした態度で断ることが賢明です。検討の結果、その物件を見送ることになれば他社を含め、また改めて新しい物件の紹介を依頼することで何ら問題はありません。
なお、不幸にもご質問のような不動産業者同士の争いに巻き込まれてしまったときには、より信頼できそうな側と連絡を取りつつ、しばらくの間は静観しているしかないでしょう。その物件の購入自体をやめる前提であれば、双方の業者とも毅然とした態度で断ってください。
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