親からの援助を贈与にするか、共有名義にするか
親から住宅購入資金の援助を受けるときに、相続時精算課税制度や住宅取得資金贈与の特例を活用すれば、一定額までの贈与を無税にできますが、これらの制度を使わずに援助分を親の名義にすることも考えられます。その場合、贈与税の基礎控除額(110万円)分を夫(または妻)の自己資金分に充当し、それを超えた分について共有持分を計算すればよいでしょう。
なお、住宅取得資金にかかる贈与の特例は、その制度内容や非課税枠が毎年のように変更されるため、贈与を受ける年の内容をしっかりと確認しておくことが必要です。
ただし、共有名義にした親が同居しないときには、その持分について各種の税金における居住用財産の特例などは適用できませんし、いざ相続が発生したときには自分たちの住む家が兄弟姉妹との共有になってしまうこともあり得ます。
どうするのがいちばんよいのかは、ケースバイケースで考えるしかありません。
共有名義のメリットとデメリット
それでは最後に、共有名義にすることのメリットとデメリットを考えてみましょう。ときどき「相続のときのことを考えると妻の名義を入れておいたほうがよいのか」というご質問をいただくのですが、多額の相続税が発生するような資産家の人ならともかく、ほとんどの人にはあまり意味がありません。
もちろんさまざまな条件で比較検討もできますが、それは「夫と妻のどちらか一方が必ず先に亡くなる」ことを前提に判断することになってしまいます。前提条件と違う事態が起きれば、よいと考えてしたことが逆の結果にもなりかねないでしょう。
共有名義にした後で離婚することになってしまうと厄介な面も
離婚を機に売却しようとするとき、共有名義であれば自分が知らないうちに勝手に売られてしまうことはないものの、逆にいえば、自分が勝手に売ることもできないわけです。
これもどちらがよいのかは、そのときになってみなければ分からないことです。別れた妻は「離婚の財産分与でまるまる貰えたのに、共有名義にして負担した分だけ損した」と考える場合もあるでしょう。
なお、原則として売却したときに利益が出れば共有持分の割合に応じて分け、負債が残ればそれも共有持分の割合に応じて負担することになります。
また、夫と妻のどちらかが行方知れずになってしまったときも困りものです。住宅ローンの返済が苦しくなって売却しようとしても、共有者が揃っていなければ売るに売れません。
一方で、共有名義とすることにより夫と妻の両方が住宅ローン控除の適用を受けられたり(連帯債務もしくは別名義の住宅ローンの場合にかぎる)、将来売却するときには3,000万円の特別控除をダブルで受け、最大で6,000万円までの控除を受けたりすることも可能になります。
ただし、妻が住宅ローン控除を受けられるようにすることで夫の住宅ローン控除額が減るケースもあるので、実際にメリットが生まれるかどうかは個々に試算してみなければ分かりません。
また、3,000万円の特別控除もそれだけの譲渡益が出なければ意味がないのですから、これも物件次第です。
結局のところメリットがあるかないかではなく、「必要に応じて共有名義にする」というのが正解なのでしょう。ただし、数億円以上の資産をお持ちの人は共有名義で資産を分散させることのメリットが大きい場合もありますから、税理士の先生などにご相談ください。
ちなみに、「結婚後の夫の収入で得た財産は夫婦の共有財産である」という考え方もあるでしょうが、それは別の場面でのことです。共有名義ではない不動産が、自動的に夫婦の共有財産となることはありません。
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