住宅の売買契約を締結した後で、勤務先からいきなり転勤を命じられることもよくある話です。買主は何とか白紙解除にしてもらいたいでしょうが……。
(東京都杉並区 福岡行さん 30代 男性)
住宅を購入すると転勤になる!?
買主の立場からすれば「購入するための前提条件」が変わったのであり、「白紙解除ができて当然だ」と考える人も多いでしょう。
しかし、転勤の理由で売買契約を解除しようとしても、それはあくまでも「自己都合による契約解除」とされ、自動的に白紙解除とはなりません。
また逆に、転勤を理由とした白紙解除を常に認めることとすれば、契約をやめたくなった買主が勤務先と示し合わせて虚偽の転勤話を作り、解除権を乱用する恐れもあるでしょう。勤務先でのことは外の人に分かりませんから、転勤話が本当かどうかも売主には判断ができないのです。
売買契約は売主と買主の双方がきちんと守ることを前提として成り立つものであり、決してどちらか一方の都合だけを優先させるものではありませんから、「自己都合による契約解除」について厳しい判断がされるのも、ある程度は仕方がないのです。
いずれにしても、転勤を理由に売買契約をやめようとすれば、手付金の放棄による解除が原則となります。
また、個人が売主の中古住宅では手付解除の適用期限が定められていることも多く、その期限を過ぎていた場合には違約金(売買価格の20%程度を定めているケースが多い)を支払わなければならないこともあります。
しかし、事情をよく説明して理解を得られれば、売主の譲歩によって白紙解除(合意解除)にできたり、双方の話し合いによって手付金の一部放棄で済んだりするケースもあるでしょう。
どちらかといえば、不動産業者が売主の新築物件のときのほうがこのような譲歩を得やすく、また、キャンセルが出てもすぐに次の買主が見つかるような人気物件であれば、白紙解除にしてもらえる可能性も高いようです。
とはいえ、売主が譲歩してくれなければあくまでも手付金の放棄などによって売買契約を解除せざるを得なくなってしまいます。
それでは、このような事態を避けるための方策や、契約解除以外の選択肢について考えてみることにしましょう。
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