一連の不動産売買手続きのなかで極めて重要な契約書類。誤字や脱字など、文字の間違いはできるかぎり避けたいものですが……。
(東京都江東区 匿名 30代 女性)
不動産の売買でいえば「売買契約書」「重要事項説明書」をはじめ、契約に関わるほとんどすべての書類に当てはまることです。最近では「消せるボールペン」などもよく使われていますが、当然ながら消去による訂正もダメです。
契約書類をパソコンで作成することが多く、作り直しも容易だが……
そのため、誤字や脱字などを手書きで直すこと自体が少なくなり、逆に訂正方法を十分に理解していない営業担当者が増えているのかもしれません。
それでは、売買契約書などを訂正するときの基本的なやり方を、作り直しのケースも含めて見ていくことにしましょう。
売主業者や媒介業者が適切に処理をすればそれで済む問題ですが、消費者のかたにもぜひ知っておいていただきたい基礎知識です。
売買契約の前に間違いが見つかった場合
まず、訂正以前の問題として、不動産業者は「間違いのない契約書類を作成すること」が大原則です。いったん作成した契約書類を何度も見直し、業者の体制に応じて複数人によるチェックをしたうえで、文字の間違いなどがあれば書類そのものを作り直します。とくにパソコンへ入力して書類を作成するのであれば、売買契約が始まる数分前でも作り直しは可能でしょう。手書き部分が多くて手間のかかる契約書類だったとしても、時間の許すかぎりは作り直すべきであることに変わりはありません。
ただし、事前に売主や買主の確認を受けた契約書類に対し、契約内容そのものに変更が生じるような修正が必要な場合には、必ず双方の了解をとったうえで作り直しをするべきです。
一方、消費者の立場から見たとき、売買契約書などに誤字や脱字が多くあちこち訂正だらけ、というような状態であれば、不動産業者の社内における事前のチェック体制が不十分だと考えるべきでしょう。
誤字や脱字だけでなく、契約条項の重要な部分で間違いや不適切な記述を見落としている可能性もありますから、場合によっては契約の仕切り直しを求めることも必要です。
売買契約の途中で間違いが見つかった場合
売買契約の一連の手続きが始まり、宅地建物取引士が重要事項の説明をしているとき、あるいは売買契約書の読み合わせをしているときに誤字や脱字などが見つかることもあるでしょう。このような場合には、たとえ書類を作り直す時間があったとしても「作り直さずに訂正印で処理をすること」が原則です。
そうしないと、いったん説明を終えた重要事項説明書、あるいはいったん読み合わせを終えた売買契約書と、作り直した書類との整合性が保証されません。
もし作り直しをして、見つかった誤字や脱字の訂正部分とは違うところが勝手に書き換えられていたら大問題です。作り直した後で再び説明や読み合わせをするのなら話は別ですが……。
ただし、単なる誤字や脱字ではなく、売買金額や支払い条件など重要な部分に間違いがあれば、どれほど時間がかかろうともその場で契約書類を作り直してもらうべきです。もちろん、作り直した書類では該当部分以外のところに改変がないか、慎重にチェックしなければなりません。
契約当事者の署名・押印後に間違いが見つかった場合
契約当事者(売主と買主)が署名・押印をした後に誤字や脱字などが見つかった場合には、改めていうまでもなく「訂正印で処理をすること」が原則です。ただし、訂正箇所があまりにも多かったり、担当者が訂正を失敗して「訂正の訂正」のような状態になったりしたときなど、場合によってはいったん署名・押印した契約書類を破棄し、初めから作り直したほうが良いこともあるでしょう。実際にどうするのかはケースバイケースです。
それでは次のページで、書類を訂正するときの基本的なやり方を見ていくことにしましょう。
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