住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

「フラット35」 は使いづらいの?(3ページ目)

かつては住宅ローンの主役だった、住宅金融公庫による直接融資。その後継である 「フラット35」 は、まだ十分な地位を得たとはいい難い状況のようですね。現状の問題点を考えてみましょう。

執筆者:平野 雅之


フラット35のような長期固定金利型の住宅ローンが必要とされる背景には、変動金利型の住宅ローンにおける金利上昇リスクがあります。変動金利型の場合には、いまの金利が低くても将来的にはどうなるか分からず、毎月の返済額が5年ごとにアップし続けるかもしれないのです。

しかし、相対的に物件価格が低い地方圏であれば、変動金利型住宅ローンでも金利上昇リスクへの対処はしやすいでしょう。あくまでも大都市部と比べた場合ですが・・・。また、地元の金融機関が取り扱う10年~20年程度の固定金利型住宅ローンでも十分な場合が多いものと考えられます。

マンション
引き渡しまでがとても長い新築分譲マンションでは、安心して使える住宅ローンがない!?
つまり、フラット35を切実に必要としているのは、物件価格が高く、借入れ額も大きくなりがちな大都市部。ところが、その大都市部では (新築分譲一戸建てや完成済みマンション、中古住宅など短期間で引き渡しを受けられる物件に比べて) 青田売りの新築分譲マンションの比率が高く、引き渡しが1年先、2年先などということもさほど珍しくありません。フラット35を使おうと思っても、それまでに金利がいったいどうなるのか、まったく予測できないのが現状です。

また、大都市部では民間の金融機関がみずから貸し出す住宅ローンとの競合も多いもの。それぞれの金融機関による独自の長期固定金利型住宅ローン商品も増えつつあるなかで、フラット35が不利とはいえないまでも、フラット35の優位性は相対的に低下しているといえるでしょう。

一方、消費者から住宅ローンの相談を受けたり、勧めたりする立場の不動産業者などからみても、 「長期的に考えればたぶんフラット35が有利だろう」 とは思いつつ、引き渡しまでが長く適用金利がまったく分からないケースでは、自信をもってフラット35を勧めることはできない、というのが現状ではないでしょうか。

今年度の商品改善では見送られましたが、住宅金融支援機構のなかでは、申し込み時点での金利決定方式が検討されているようです。ところが、金利をロックする代わりに 「金利確定手数料」 を利用者が前払いすることを前提にしている様子。 「金利確定手数料」 の設定水準によっては、かえって顧客離れを引き起こすことも考えられますね。

金利の先高感が薄れている時期には優位性をアピールできず、先高感が強まればフラット35自体の不安感も増す・・・。いずれにせよ、フラット35がしっかりと定着するまで、まだしばらくは難しい局面が続きそうです。



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