不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

住宅購入者は必須! 用途地域の基礎知識(2ページ目)

用途地域の規定は、都市部における土地利用や建築の制限のなかで最も基本となるものです。それぞれの用途地域でどのような違いがあるのか、これから住宅を購入しようとするときにはじっくりと考えてみましょう。(2017年改訂版、初出:2007年5月)

執筆者:平野 雅之


それぞれの用途地域の特徴

12種類の用途地域のうち、住宅を建てることができないのは工業専用地域だけで、他の用途地域であれば一戸建て住宅もマンションも建てることができます。

ただし、住宅地としての環境は大きく異なりますから、それぞれの特徴をよく考えなければなりません。

第一種低層住居専用地域

一般の住宅のほか、小規模な兼用住宅(店舗・事務所など)、小・中・高等学校、老人ホーム、診療所などを建てることができます。

容積率の制限や建物の高さ制限などが他の用途地域よりも厳しく、あまり高い建物が建つこともないため、住宅地の環境として最も優れた地域です。分譲マンションが建設されることもありますが、3階建て程度の低層マンションが中心となります。

その代わりに、一定規模以上の店舗や病院なども建てられず、小規模な住宅兼用店舗を除いてコンビニエンスストアなども立地することができません。

そのため、第一種低層住居専用地域が広範囲に指定されたエリアの中心あたりに住んでいると、日常のちょっとした買い物などにも不便なことがあります。

また、屋根を備えた独立車庫なども建てられませんから、自分の敷地内に車庫がなく月極駐車場などを借りなければならない場合、たいていは平面の屋根なし駐車場となります。

第二種低層住居専用地域

第一種低層住居専用地域に建てることのできる用途に加え、150平方メートルまでの一定の店舗や飲食店なども認められる地域です。

第一種低層住居専用地域に比べて、少し利便性の高まる地域だともいえますが、実際に指定されているところはごくわずかです。

第一種中高層住居専用地域

低層住居専用地域に建てることのできる用途に加え、病院や大学、500平方メートルまでの一定の店舗なども認められます。また、2階以下かつ300平方メートル以下の自動車車庫も建てることができます。

容積率などの制限も緩くなり、都市部では中高層マンションも比較的多く建てられています。

第二種中高層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域に建てることのできる用途に加え、1,500平方メートルまで(2階以下)の一定の店舗や事務所なども認められます。ある程度の住環境水準を維持しつつ、日常生活の利便性も高まる地域です。

第一種住居地域

3,000平方メートルまでの店舗や事務所、ホテル・旅館などのほか、50平方メートル以下の小規模な工場などを建てることもできるようになりますが、基本的には住居主体の地域です。指定面積が最も広く、大規模なマンションも数多くみられます。

第二種住居地域

住居地域でありながら、パチンコ店やカラオケボックスなどの立地も認められる地域です。この地域内の物件を検討するときには、より慎重に周辺の環境を確認することが大切です。

準住居地域

住居系の用途地域では最も許容範囲が広く、営業用倉庫、小規模な自動車修理工場・劇場・映画館なども認められる地域ですが、実際に指定されているところはごくわずかです。

近隣商業地域

周辺の住民が日常の買い物をするためのお店やスーパーなどが多くなります。商店街が形成されることもあり、やや賑やかな環境になるでしょう。日常生活の利便性は高まりますが、150平方メートルまでの工場なども立地できる地域です。

商業地域

市街地の中心部や主要駅のまわりなどに指定され、多くのビルが立ち並ぶ地域です。一定の工場などを除いて、ほとんどの用途の建築物を建てることができるため、周辺の環境や隣接地の建築計画などにはとくに注意しなければなりません。

相対的に地価が高くなるため、新たに一戸建て住宅が建てられることは少ないのですが、中高層マンションだけではなく20階建て以上の超高層マンションも数多く建設されています。

ただし、基本的には住環境が重視されることのない地域であり、日影規制など日照を保護するための規定も適用されません。

準工業地域

商業地域と並んで用途の幅が広く、一定の風俗営業店と危険性や環境悪化のおそれが大きい工場などを除いて、ほとんどの用途の建築物を建てることができます。

マンションの供給も比較的多い地域ですが、昔からの町工場が集まっている場所など居住者の多い市街地のなかで指定されている例も少なくありません。

平日と休日で様相が大きく異なる場合もありますから、曜日を変えて複数回の現地チェックをすることが大切です。

工業地域

学校や病院、ホテル、映画館などが建てられなくなる代わりに、どのような工場でも建てることができるようになります。

住宅の立地は認められているため、工場跡地の再開発などで大規模なマンションや一戸建て住宅が分譲されることもありますが、環境を悪化させる工場や危険性の高い施設も建てることができるため、周辺環境には十分な注意が必要です。

敷地のまわりだけでなく、最寄り駅へ行くまでの間についても環境やトラックの交通量など、よく観察することが大切です。また、商業地域と同様に日影規制などが適用されません。

工業専用地域

唯一、住宅を建てることができない用途地域です。


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page2 ≪それぞれの用途地域の特徴≫
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