戦後、右肩上がりで上昇してきた国内の地価は、バブル経済の崩壊とともに1990年代前半から下落に転じました。
その後、3大都市圏などでは2006年あたりにいったんは上昇へ転じたものの、世界的な景気後退の影響なども受けて再び下落が続き、その後2013年頃からようやく地価の回復傾向が目立つようになってきたところです。
しかし、地方圏の多くはその間もずっと地価下落が続いてきたため、住宅地でも東京都との価格差が開く一方です。いったいどれくらいの格差があるのか、国土交通省が発表している「住宅地価格指数(住宅地の都道府県別価格指数)」をもとにまとめてみました。
住宅地価格は東京都だけが突出!
住宅地価格指数とは、基準地価(都道府県地価調査)における住宅地価格の平均値を、東京都を100として指数化したもので、毎年9月の基準地価発表に合わせて国土交通省から公開(1997年以降)されています。まずは1997年からの住宅地価格指数の推移を確認してみましょう。ただし、すべての都道府県を1つのグラフに表すことは困難ですから、15都道府県に絞っています。
公示地価や基準地価では3大都市圏における地価上昇が目立つようになり、依然として下落が続く地方圏との対比が際立っています。
ところが、住宅地価格指数でみると神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県なども下がっているため、「大都市圏vs地方圏」ではなく、「東京都vs東京都以外のすべての道府県」といった構図が浮かび上がってくるでしょう。
東京都における平均価格の動きも十分に考慮しなければなりませんが、とくに価格水準が比較的高かった府県の落ち込みが激しくなっています。
1999年頃には価格指数がともに70前後だった神奈川県と大阪府は、その後に東京都との格差が大きく開き、とくに大阪府は2007年から50を割り込むようになりました。
その一方で、秋田県や広島県、島根県などは、2002~2005年頃まで価格指数のアップが続き、もともとの価格水準が低いものの東京都との差を少しずつ詰めていた状況です。
東京都の地価下落に伴い、2009年頃から神奈川県、京都府、大阪府などで価格指数がアップする局面もありましたが、2013年頃からは再び格差が拡大する動きとなっています。
なお、1997年と2015年を比べたときの住宅地価格指数の下落率が最も 大きいのは千葉県、次いで大阪府の順です。
また、2015年時点で住宅地価格指数が最も低いのは秋田県の4.4で、東京都との格差は20倍以上です。価格指数が10に満たない(東京都との格差が10倍以上)のも25道県にのぼりました。
東京都の住宅地価格も一様に高いわけではなく、都心区と周縁区、多摩地域などでかなり様相は異なるのですが、住宅選びの際に対象エリアを少し変えることで、価格がまったく違ってくる場合もあるでしょう。
住宅政策も地域に合わせたアレンジが必要!?
住宅地価格では東京都だけが突出している感が強いものの、依然として一極集中傾向は続き、東京都の人口は増え続けています。当然ながら住宅を購入する人ばかりではなく、賃貸住宅を借りる人も多く含まれているのですが……。他の道府県と比べれば2倍から20倍も地価が高い東京都ですが、「高くなり過ぎて、東京都内ではもう誰も買わない」という状況でもありません。なかには生活上の問題から「東京都内でなければ住めない」という人もいることでしょう。
もっとも、住宅の建築費自体は地域による差が比較的小さいため、建物代込みの住宅価格として考えれば、その差はもう少し縮まるかもしれません。
それぞれの都道府県のなかでも都市によって地価水準の違いは大きく、また、所得格差の問題などもあって一概にはいえませんが、東京都で住宅を購入する場合と、他の道府県で住宅を購入する場合では、生涯の収入に占める住居費の負担割合が大きく異なってきます。
住宅購入の際の資金計画の立て方にも、東京かそれ以外かで大きな違いが生じるでしょう。
東京都と他の道府県の価格差は広がるばかりであり、住宅税制や法律による住宅取得支援策なども、全国一律の規定では弊害が大きくなりそうに感じられます。東京には東京に合った住宅政策が、そして地方には地方の実情に合った住宅政策が必要なのかもしれません。
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