非課税枠には資産の早期移転の側面もある
高額な贈与税がかからないだけでなく、住宅ローンの借入額を減らすことにより利息負担も大幅に軽減できるなど、贈与を受けられる人にとってはメリットの大きなものでしょう。
ただし、その適用要件などは少し複雑なものになっていますから、しっかりと理解したうえで検討することが欠かせません。
非課税枠は毎年のように変わるほか、個々の条件によっても異なる
住宅取得資金に対する贈与税の非課税枠については、平成20年からの急速な景気悪化を受けた経済対策の一環として租税特別措置法が改正(平成21年6月26日施行)され、その年の1月1日にさかのぼって適用されています。当初の非課税枠は500万円でしたが、その後の特例適用期間延長や制度改正に伴い毎年のように枠の増減が図られるようになったほか、平成24年からは良質な住宅とその他の住宅による差別化、さらに平成28年10月からは負担する消費税率(10%の消費税を負担するか否か)による区分もされることになっています。
その一方で、相続時精算課税制度の創設に伴い平成15年から続けられてきた住宅枠の上乗せ措置は、平成21年12月31日をもって廃止されました。
現行の特例による非課税枠は暦年課税制度における贈与税の非課税枠(110万円)または相続時精算課税制度における非課税枠(2,500万円)と併用して加算することができます。
なお、個人が売主となる既存住宅(中古住宅)を購入するときには消費税が課税されませんから、上の図の「非課税」部分が該当します。
良質な住宅とは?
住宅取得等資金の贈与の特例において非課税枠が拡大される「良質な住宅」とは、省エネルギー対策等級4(平成27年4月以降は断熱等性能等級4)相当以上であること、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること、一次エネルギー消費量等級4以上であること、高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であることの、いずれかを満たす住宅です。これらについて一定の書類により証明されたものでなければなりませんから、契約の前にしっかりと確認しておくことが大切です。
契約日、贈与日と非課税枠の関係に注意!
適用される非課税枠について、平成26年までは贈与を受けた日が属する年によって判断されていました。しかし、平成27年からは購入、建築、増改築などの「契約日」で決められることになっています。たとえば平成28年2月に「その他の一般住宅」を購入する契約を結んだのであれば、適用される非課税枠は700万円です。平成27年のうちに贈与を受けていたとしても、1,000万円の非課税枠ではありません。
逆に、平成27年のうちに「その他の一般住宅」を購入する契約をしていれば、実際に贈与を受けるのが平成28年でも1,000万円の非課税枠を適用できることになります。
その一方で、贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居すること(もしくは遅滞なく入居できることが確実な状態であること)が求められますから、平成27年中に贈与を受けていれば平成28年3月15日までに入居(またはそれに近い状態に)しないと特例が適用されません。
とくに平成28年10月から1年間は、10%の消費税を負担した場合における非課税枠が大きくなりますが、これを目一杯使おうとするときには、契約日と贈与日についてしっかりと確認しておくことが必要です。
いずれにしても、住宅取得資金の贈与を受けてから購入物件などを探すのではなく、契約の日程がある程度はっきりしてから贈与を受けるほうが間違いはないでしょう。
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