かつてのギャンブルシティが
住み続けたい街に変貌したのは再開発がきっかけ
東京競馬情内。広大な敷地内には子どもの遊び場もあり、地元のファミリーには楽しい遊び場のひとつ。ただ、開催日には渋滞がひどいなど不満の声もある
ペデストリアンデッキの左手にあるのが映画館なども入った複合ビル『くるる』、右奥に見えるのが伊勢丹
順に行われてきた南口の再開発のうち、最後に残されてきた第一地区がようやく動き始めました。平成23年5月に都市計画が認可され、以降、立ち退き交渉などが始まっているのです。該当するエリアは府中駅、けやき並木通りに面した約1.1ヘクタールで飲食店が密集する路地のほか、けやき並木通り沿いのビルなども含まれています。計画されているのは地下4階、地上15階の複合ビルで1階に周辺の既存店舗、4階に飲食店などがはいる予定で上階には140戸ほどの住宅も予定されています。
防災の観点からすると、現在の密集エリアに問題があるのは分かりますが、現状の再開発計画にも問題があります。25年度に工事に着工することになっていますが、24年夏の時点で駐車場の入り口がどこになるかが決まっていないのです。これまでの再開発で登場した他ビルでも週末などには駐車場待ちの渋滞ができているそうで、どこに入り口を作るかは街全体の問題です。現状では反対の多いけやき並木通り沿いにできる計画となっていますが、ここは市がいずれ車の通行を禁じ、遊歩道にしたいと現状でも日曜日には歩行者天国になっています。そこに駐車場の入り口を作るとすると、日曜日には駐車場が使えないことになります。また、府中のシンボルともいえるけやき並木に大渋滞を作り、排気ガスをまき散らすのがこの街のためになるものかどうか。
また、駅前の飲食店街はこの街でも有数の繁華街。再開発終了まで他の場所に移転することになり、また、再開発後はビルの中に入ることになりますが、そこでも今の活気を保ち続けることができるかどうか。下町っぽい猥雑さも街の魅力のひとつと考えると、金太郎飴的な開発には疑念もあります。
もうひとつ、冗談のようですが、工事が始まって遺跡が出たらどうなるのかという懸念もあります。該当地域は大國魂神社のすぐ近くで、遺跡が出てもおかしくはない立地。2010年にこの記事の取材をした折に府中本町駅近くにあったスーパーが取材直後に一時閉店、建替え工事を始めたところ、重要な遺跡が発見され、閉店を余儀なくされたということがあるくらいですから、ここで何か出ても不思議はありません。その場合に計画がどうなるのか、そのあたりも出たら出たで考えるということのようですが、果たしてそれで良いものか。せっかく、何年もかけて意見をまとめてきた計画です、今後の府中がより良い街になるよう、もう少し知恵を絞ってみてもいいのではないかと思います。
都心からさほど離れていないのに、自然を身近で楽しめる点がこの街最大の魅力
府中の住宅事情については別の記事で詳細にご紹介します。
*2013年9月の記事に加筆修正。