エローラ石窟群でインド美術にうっとりする
カイラーサナータ寺院。下に小さく見える人と比べると巨大さがわかる。この寺院、石を積み上げて造ったのではなく、岩を掘り抜いた「彫刻」。世界最大の彫刻といわれることも ©牧哲雄
今回はカイラーサナータ寺院をはじめとする34の石窟からなるインドの世界遺産「エローラ石窟群」を紹介しよう。
神すらその美に打たれたカイラーサナータ寺院
丘から見下ろすカイラーサナータ寺院。寺院のあちこちに精緻な彫刻が彫られている。エローラの多くの寺院は石窟の中にあるが、この寺院はほとんど露出している ©牧哲雄
カイラーサナータ寺院の上部に掘られた4頭の獅子像 ©牧哲雄
高さ32m、底面85m×50mのカイラーサナータ寺院は重い。玄武岩の黒のためか、下から山のように突き上げる構造のためか、その美はタージ・マハルの華麗な白と対極をなし、ひたすら重厚・荘厳だ。
山中をくり抜いて造られたエローラ石窟群 ©牧哲雄
驚くのは、この寺院が石を積み上げて造られたものではなく、山を彫った「彫刻」であること。100年をかけてノミとカナヅチだけで山を彫り、掘り出された石はなんと20万トン。3階以上の多層構造で空中回廊まである巨大な彫刻ながら、壁は恐ろしいほど繊細なレリーフで埋め尽くされている。規模と繊細さが同居した、数少ない遺跡のひとつだ。