年金と基本手当はどのように併給調整される?

老齢厚生年金には、年金が一部あるいは全額支給停止になる併給調整がいくつか設けられています。雇用保険の基本手当もそのひとつです。

基本手当を受給する場合は、65歳未満に支給される特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止されます。全額です!

<年金と基本手当の併給調整の仕組み>
1. ハローワークで求職の申し込みをして基本手当を受給する場合は、基本手当が優先支給され、この間は年金の支給が停止される。

2. 支給停止期間は、ハローワークで求職の申し込みをした日の属する月の翌月から所定給付日数または基本手当の受給期間満了日の属する月までの間(調整対象期間という)。

3. 失業給付受給可能期間中は失業給付日数が確定しないため、調整対象期間が満了したときに一定の計算式に基づいて年金と基本手当の期間調整が行われ、事後精算が行われる。

<年金と基本手当の併給調整の注意点>
1. ハローワークで求職の申し込みを行うと自動的に基本手当を選択したことになる。

2. 基本手当は、一定の待機期間後に支給が開始される。定年退職の場合は7日間、自己都合退職の場合は7日間の後、さらに3カ月の待機期間がある。この待機期間中も、年金の支給は停止される。

なお、65歳以降に退職した場合に雇用保険から支給される一時金「高年齢求職者給付金」は年金との併給調整はありません。

年金と基本手当、どちらがお得?

基本手当と特別支給の老齢厚生年金を同時に受給できないのであれば、どちらを受給するほうがお得なのでしょうか。

平成25年4月以降、原則65歳継続雇用(経過措置として60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢までは継続雇用)が企業に義務づけられました。勤続35年・60歳で定年退職するAさんと、60歳で再雇用契約を結んで働き続け、特別支給の老齢厚生年金受給開始年齢で退職するBさん、この2つのケースで考えてみましょう。

<60歳で定年退職するAさんの場合>
定年退職者は退職時の賃金が高く、基本手当日額が上限という人が大多数です。基本手当日額の上限額(6709円)、支給期間150日で計算すると、受給総額は約100万円になります。

60歳代前半に受給する特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は「ねんきん定期便」で確認することができますが、平均的なサラリーマンの報酬比例部分の年金額は120万~150万円です。Aさんの基本手当総額は約5カ月間で100万円程度ですから、基本手当を選ぶほうがお得です。

<特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢で退職するBさんの場合>
60歳以降も契約・嘱託・正社員として継続雇用される場合、一般に賃金は60歳時点の5~7割程度に下がります。これは特別支給の老齢厚生年金と雇用保険から給付される「高年齢雇用継続基本給付金」を考慮した結果のようです。

60歳で定年退職、同日に賃金月額20万円で再雇用契約を結んだBさん。年金が支給される年齢で退職すると、雇用保険から支給される基本手当は、150日間でおおよそ70万円程度。この金額では、特別支給の老齢厚生年金額と同等もしくはそれ以下の可能性があります。

ハローワークで求職手続きをする前に、基本手当の日額を確認し、年金受給額と比較検討する必要があります。同額程度であれば基本手当を選択するのが賢明な場合が多いようです。それはなぜでしょうか。 

基本手当の隠れたメリット、それは非課税

基本手当には隠れたメリットがあります。それは「非課税扱い」です。

年金は雑所得として所得が発生します。収入があると、所得税や住民税、国民健康保険税、介護保険税などが課税されます。それに対し、基本手当は「所得なし」とみなされるので課税されません。これが一般的に「定年退職者は基本手当を選択するほうが年金よりメリットが多い」と言われる一因です。

60歳以降も働き続ける場合、退職年齢によって退職前の給与や年金額や基本手当日額は異なるので、基本手当や年金だけでなく、所得税や住民税等の大まかな負担額も計算して比較するのをおすすめします。

「年金と雇用保険どちらが得か」は簡単に判断できなくなりました。65歳以降に退職する場合は、こんな比較検討は必要ありませんが……。

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