見積もってみたら、保険金額に差が!
「複数の保険会社で火災保険の見積もりを取ったら、設定する保険金額に差があった。どれが正しい?」といった質問をお受けすることがあります。そこで今回、複数の保険会社・共済団体による建物の簡易評価を調べてみました。前提条件は、東京都にある2010年新築の一戸建て住宅で、建物構造が木造省令準耐火(2×4などで一定の耐火構造のもの)、延べ床面積は165平米(50坪)というもの。今回は保険会社など、契約の引き受け手による建物の評価の差について、この条件だけを出した場合の標準的な簡易評価を行っています。実際の建物は、使用する材料や部品などで建築コストが個々に異なってくるので、上記と同様の条件の建物であっても、保険金額が以下の通りにならないことは多々あります。また、以下のデータは損害保険会社2社を除き、インターネット上で評価額を算出することが可能でした。ただそのため、保険会社等によっては、前記した前提条件よりも少ない条件設定で見積もっているケースもあると思われますので、あくまでも参考値であることをご承知おきください。
以下がその結果です。最も高い評価額と最も低い評価額では、1439万円ほどの開きが生じています。評価額は現在時点における適切な保険金額ですが、建物が全焼した場合にすなわち受け取れる最高額ということになります。そう考えますと、この差は思いのほか大きいですね。
企業・団体別 建物の保険金額
保険金額の差は、建物価値の測り方の違い
マイホームの状況をきちんと申告、正しい評価を
同じ建物であるにもかかわらず、なぜ保険や共済契約の引き受け手によって評価額に差が生じるのでしょうか。
これは、評価を決めるための平米当たり単価(あるいは坪単価)が保険会社により異なっているから。平米当たり単価は、建築指標等複数のデータをもとに保険会社等ごとに算出されるのですが、その元となるデータについては、どこでも同じものを使っているわけではなく、さらに独自のアレンジを加えたりしているので、差が生じるわけです。
したがって、どの保険金額が正しいとか、間違っているということはないのです。前述したように、そもそも、平米単位の建築費単価は個々の建物により異なります。マイホームの状況をきちんと申告して、正しい評価額を設定することが大切ですね。共済商品は「坪単価」で算出をする
共済商品は坪単価の評価額が決まっている
なお、共済商品の場合、所在地と木造・非木造の分類、住宅の坪数で共済金額が決まり、決定要素はごくシンプル。坪あたりで設定できる共済金額が決まっているので、私たちでも共済金額の算出がワンステップでできます。逆に言うと、この坪単価設定に収まらない住宅の場合など、個々の住宅の事情を加味した設計には限界があるということにもなります。
マイホームの坪単価当たりの建築費単価が、共済の坪単価よりも大幅にオーバーしている場合には、実際の再取得価額に届かないことがあるかもしれません。この点、火災保険であれば、評価額についての柔軟性ある設計が可能です。
マンションを買い直せるほどの保険金額を設定できるものではない
マンションの火災保険金額は購入価格より低くなるもの
分譲マンションは専有部分と共用部分に分かれています。管理規約にもよりますが、共用部分は通常、管理組合が火災保険をかけます。よって私たち自身が火災保険の契約をするのは専有部分についてのみです。この専有部分が、上塗基準・壁芯基準いずれで定められているかで建物の評価額は変わってきます。
壁芯基準であれば、延べ床面積は上塗基準よりも当然広くなり、それに伴って評価額も高くなります。ただ最近では、ほとんどの管理規約が上塗基準によるものとなっているようです。見積もりの際、前提条件が管理規約に沿ったものになっているか、きちんと確認しましょう。
またマンションは、火災保険評価額が分譲価格よりも大幅に低くなるのですが、ここでも勘違いが多いよう。マンションの分譲価格には土地価格が含まれていますし、住宅業者の利益も乗せられています。さらに躯体部分は共用部分ですから、この3点分は専有部分の火災保険には通常反映されません。こうした理由から、マンションの火災保険金額は分譲価格よりも低くなるのです。そもそもマンションの場合、火災保険金が他のマンションを買い直せるほど受け取れるといったものではないわけですね。
なお、個々の契約では、保険金額が高いからすなわち、保険料も高くなるとは限りません。なぜなら、保険会社によって保険料を決める基準が異なりますし、補償の範囲をどこまでにするかにより保険料は変わるからです。火災保険料を決める要素は、建物や所在地、さらに建物構造に加え、補償の範囲、取り扱う保険会社によっても変わってくるのです。
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