濃醇旨口、すがすがしい辛口男酒に惚れ直す
今年の一月の話で恐縮だが、話題の海老蔵『雷神不動北山櫻』を見に行った。通しで五役を演じるところが見ものの華やかな出し物で、なにより一番最後の『不動明王』が空高く舞い上がるイリュージョンがなんといっても見所で、市川宗家独特のかっと見開いた目と燃え立つようなキメの顔がなんとも印象的だった。不動明王が右手に持つのが『降魔の剣』。
そうあの独特な形の剣(つるぎ)ですな。
これを見て思い出したのが、灘の酒『剣菱』だ。なんとも酒飲みの発想と笑われそうだけど・・・、本当。
インパクトのあるラベル。こちらは『極上黒松剣菱 特選』。近所のスーパーで買えるのもうれしい。 |
で、思い出しついでに飲んでみました。
正直久しぶり。
しかし、なんとまぁ辛口だこと。ピリッとしゃきっと口の中を引き締める味わい。いや、おおげさにいえば焼酎のような感じさえしてしまってちょっと驚いた。
調べてみると日本酒度はプラス0~1程度。いうならば甘口と辛口のちょうど中間といった数字だ。最近はプラス5とか10とか15とか20なんていう辛口もあるからねぇ・・・。
しかし二口三口と飲み続けると、だんだんとふくよかさや旨味や厚みのようなものが感じられ、しっかりとした酸味があることに気がつく。
ふむ、なるほど、これが『濃醇旨口』かとあらためて実感した。最近、淡麗で甘い味わいのお酒ばかり飲んでいたんだなぁとあらためて実感した。
一目見て「ああ、剣菱」とわかるこのデザインはすごい。(『酒類総合研究所 日本酒ラベルコレクション』より) |
- 生もと系山廃仕込み
- 寒仕込みのうえに、ひと夏寝かせた秋あがり酒
500年以上の歴史のなかで、蔵元所有者は何度かかわって現在で5件目。それぞれの代がこの『剣菱の個性』をぶれることなく守り抜いてきたことは、特筆すべきだろう。代がかわっても、名を襲名し、それぞれのお家芸を引き継ぐ歌舞伎の世界と通じるところがあるように思える。
一本筋の通った骨太の味わい。灘のお酒はからりとした男酒というが、その飲み心地は、からりと晴れわたる初夏の空のようにすがすがしい。これまた、海老蔵の若々しい熱演を見たあとの爽快感と似ている気がした。
■剣菱酒造株式会社
神戸市東灘区御影本町3丁目12番5号
TEL:(078)451-2501
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