さて、この日の夜は、とてもうれしい宴会の席になった。
それは、大好きな大好きな『カリー 春雨』の造り手、宮里酒造の宮里徹さんにお目にかかれたことだ。
旅の予定には入っていなかったが、今回の旅をアレンジしてくださった鹿児島の酒販店「宝納」のご主人若松隆男さんの計らいだ(「宝納」さんについては第3回の鹿児島編でご紹介します)。会いたいと願えば、人って、会えるもんなのだね~。
大好きな『カリー春雨』の宮里徹氏新酒のカリーは透明ボトルだ |
でも、一口飲んだその日から、すっきりとした最初の口当たりのあとに、ググッと出てくる華やかで香ばしい後味が、長く長く、心地よ~く、気持ちよ~く、残るのがなんとも印象的で、まさにもう一目惚れだったのだ。
「“春”は希望、“雨”は恵を表しています。」と宮里さん。
で、カリーの意味は?とうかがうと「沖縄では“カリーをつける”といって、縁起を良くさせるというような意味で使います。すべてが良くなるようにとあやかるつもりで乾杯のときにも“カリー!”といったりするんですよ。」なるほどやっとわかった、カリーの意味。
このカリーは新酒のラベルにつけられる言葉。新酒は比較的お手頃価格なので、縁起のいいカリーをつけて売り出されたのだとか。
私は数ある『春雨』銘柄のなかで特にこの新酒の味が好きで、前に店長をやっていたワインバーではいつもこのボトルを置いていたのだ。
「本当を言うと、カリーは2本買っていただきたいんです。ひとつは新酒で楽しんで、ひとつは瓶で熟成させて味わっていただきたい。」
さまざまに研究実験した結果、春雨には素焼きの甕による熟成は必要ないと結論付けた。ステンレスタンク、いや、できることなら瓶で熟成させたもので勝負したいと言い切るところが、宮里さん、ものすごくかっこいい。
でも、どことなく甕熟成のようなミネラルのような深い香りが漂っているのがとても不思議で、魅力的に思える。そんな風に熟成を経た十年や十五年のクースー(古酒)は生でゆっくり飲んでほしいとおっしゃる。
「おもしろい体験だったのはお寿司屋さんで、クラッシュアイスに泡盛を注いでだされたこと。どうもうちのだなあ、と思ったんですがはずれると恥ずかしいので黙ってたんです。すると『どうです、泡盛も美味しいでしょ。春雨カリーっていうんですよ』といわれて笑っちゃいました。でも、その飲み方は本当にお寿司に合って美味しかったんですよ」と笑う。
これは試してみたい飲み方ではないか。
オシャレなつくりの「GOSSO GOZZO」 |
突然、泡盛造りを父上から引き継ぐことになり、平成元年よりほぼ1人で試行錯誤しながら造ってきたのが今の春雨の味。今は3人で1200石を造っている。
言葉の端々から、ほとばしり出るようにインテリジェンスを感じさせてくれる宮里さんだが、オオトカゲを捕まえる探検ごっこの話にも目を輝かせる少年っぽさをもあわせ持つ、とても魅力的な方だった。
ちなみに、宮里さんとご一緒した沖縄創作料理の店『GOSSO GOZZO』(那覇市久茂地3-16-7 電話098-860-6565)は美味しくてオシャレな店だった。支店もいっぱいある。