スパイスは石臼でひき、ホームメイドの味に仕上げるこだわりはこれだけにとどまらない。この店では、他店にはない地方色豊かなホームメイドスタイルのカレーが多数あるのだ。しょうがの爽やかな香りが後をひく「チキンハイドラバディ」。南インドで独特の食文化をもつ街「ハイドラバディスタイルのチキンカレー」や南インド産の珍しい木の皮やスパイスが使われた「チキンチェティナドゥ」、「ラムマドラス」(珍しいスパイスたちは、この2メニューと「マドラスフィッシュカレー」にしか使用されていないそうです)。これに、揚げたカリフラワーのマリネ(Gobi65)、フライドチキンのマリネ(Chicken65)、野菜のヨーグルトカレー(アビエル)もひときわ目を引く料理である。と、ざっと挙げただけでもこの充実ぶり。ね、なんだかとっても魅力的なラインナップでしょ?重厚感のあるスパイス使いの「チキンチェティナドゥ」。「うちの料理は南インドの村の味。身体に気遣ったスパイス使いをする“ホームメイドスタイル”です。スパイスは南インド産の石臼で頻繁に挽いているから、香りがいいし身体にもいいですよ。」とアジェイさん。この後、アジェイさんの口から“ホームメイドスタイル”の言葉が何度となく発せられたのだが、なるほど。この店の料理をいただくと、「いまのはなんだろう?」と、ときどき鼻腔をぬける香りに翻弄され、心が捉まれるときがあるのはそのせいだろうか。ヨーグルトの中に豆のフライをいれたデザート感覚の甘い「ダヒワダ」。料理はどの皿にも温かみがあり、大地の香りというのか、土の香りが感じられる。しかも輪郭がはっきりしているのに、根底には丸みがあって、それでいて奥深さもある。「シリバラジ」の料理は、どれも刺激的なスパイス使いは一側面だけにすぎず、ひと皿ごとに多彩な香りと安定した品格が宿っているように感じられた。前のページへ1234次のページへ