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シャルトル大聖堂:フランスが誇るゴシック建築の傑作(4ページ目)

深い森を思わせるゴシックの荘厳な空間に舞い降りる青い光。この不思議な光をもたらすステンドグラスは再現不能といわれ、人々はその奇跡的な青を「シャルトル・ブルー」と称賛した。今回はゴシック建築の基礎知識と共に、パリから1時間で訪れることができる世界遺産「シャルトル大聖堂」の見所・観光情報・歴史を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

シャルトル大聖堂の構造

聖母被昇天像

聖母被昇天像。聖母被昇天とは、聖母マリアの魂が天使に囲まれて天に昇ったという伝説に基づいている

シャルトル大聖堂の全体は南西を向いており、南西を下に十字架の形をしている。

十字架の下部、西ファサードにはふたつの塔があり、北の塔が高さ約115mを誇るゴシックの新塔、南の塔が火事から免れてロマネスクを残す高さ約105mの旧塔になる。

十字架の下の長い直線の内部を身廊、その両脇の通路を側廊という。身廊の高さは37mにもなり、塔とあわせて当時は世界最大級の規模だった。
周歩廊の壁際に並んだ放射状祭室

周歩廊の壁際に並んだ放射状祭室。たくさんのステンドグラスを一気に見渡す眺めは壮観

十字架の横に当たる部分を袖廊(翼廊)、十字架の上部の直線内部を内陣、内陣の先の半円を後陣(アプス)、後陣の周りの丸い通路を周歩廊、そして周歩廊の周りに祭壇を並べたものを放射状祭室と呼ぶ。

ステンドグラスはどれをとっても美しいが、特に放射状祭室では、一気に十数枚のステンドグラスが次々に現れて壮観だ。この放射状祭室は東にあり、晴れた日は太陽がここからステンドグラスを次々と照らしていき、最後に西ファサード・バラ窓の「最後の審判」を照らして日が落ちる。

ロマネスクとゴシックを代表する彫刻群

内陣と周歩廊を隔てる仕切り

内陣と周歩廊を隔てる仕切りには聖書の物語がビッシリと彫り込まれている。文字が読めなかった人々はステンドグラスや彫刻を通して聖書を理解した

シャルトル大聖堂の見所のもうひとつが彫刻。

内陣と周歩廊を仕切る壁にはびっしりとマリアとイエスの生涯が描かれており、聖書の名場面を次々と眺めることができる。

また、西・北・南各面のファサードには扉口が設けられているのだが、扉口上部には見事な彫刻があるのでお見逃しなく。彫刻は扉の上のタンパンを中心に、周囲を半円状の帯=アーキヴォルトで囲まれている。さらにその下部の柱は人像円柱と呼ばれ、細長い人間の彫刻があしらわれている。
南ファサード左側扉口のタンパン

南ファサード左側扉口のタンパン(ティンパヌム)。左右の人型の柱が人像円柱、その上に伸びる円弧状の帯がアーキヴォルト

イエスや天使たちの姿はもちろん、新旧の聖書の物語をはじめ、12星座や当時の人々の暮らしの様子、なかには何かの悪魔のようなヘンテコな顔をした像もある。おもしろ彫刻を探すのも楽しいだろう。

なお、西ファサードの扉口は「ポルタイユ・ロワイユ(王の扉口)」と呼ばれ、ロマネスクのすぐれた彫刻群で知られている。 
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