コースを頼めば、ほとんどの料理を制覇できる
メルゲーズのクスクス\1900 |
羊肉のタジン パンつき¥1600(手前)鶏のパセラ¥1500(奥) |
たとえば、とんがり帽子型の鍋で出されるモロッコの国民食のタジン。羊肉のタジンは、マトンや野菜など水を一切加えずに何十種類ものスパイスで煮込んでいるから、旨みはじゅうぶん。ゴロリとした羊肉と野菜が上にたっぷり盛り付けてあるので、食べ応えもあり。羊肉以外のタジンも同様。
一番のおすすめしたいのは、「鶏のパセラ」
鶏肉とアーモンドなどをスパイスと砂糖で味付けし、パイで包んで焼いたものです。さらにこの上に、粉砂糖とシナモンを独特の模様を作るようにふっているのですが、これが何ともモロッコならではの発想で面白い!一見デザートのように見えるけれど、味は甘くてしょっぱいしっかり味。完全にメイン料理になっているところがとても不思議。
パワフルなアフリカ料理のなかにエスプリが感じられるモロッコ料理は、スパイスを多用している割には繊細な味なので、食べやすいのではないでしょうか。特にこのお店の場合はそう思います。
今となっては、クスクス人気も相成り注目されつつあるモロッコ&チュニジア料理。オープンしたと思ったら、あっという間に閉店してしまうエスニックレストランのなかで、昔から変わらぬ味を提供し続け、神楽坂という街の雰囲気に自然と溶け込み、モロッコ料理を認知させたこの店の存在は大きいと思います。継続しつづけることの難しさを考えたとき、このお店の実力のほどがわかったような気がしました。
神楽坂は、アフロフレンチダイニング「トライブス」のような新鋭のお店、「黒兵衛」のような懐かしさを感じさせる老舗ラーメン店、横丁に面していながらも隠れ家的な存在でつい長居してしまう「バー フィンガル」、そして自国料理をアピールし続けてきたモロッコ料理店「アガディール」など、昔から愛されている古きよき風情の店と新感覚の店がうまく調和した街。
品がありながらもこのバランスを保っている街は、東京では数少ないのではないでしょうか。いま神楽坂は変貌していると言われているけれど、どちらかが秀でることなく、このままのバランスを、個性を色濃く残してほしい、そう願っています。風情のある古きよき環境下で、ほどよい距離間と懐具合につきあってくれる包容力は、いつまでも必要だと思うから。
加速度的に近代化されている今だからこそ、神楽坂をはじめとする個性的な街に目を向けたいものです。
モロッコ料理店『アガディール』 03-3266-1767
新宿区神楽坂3-6-28
Lunch :11:30~14:00
Dinner:17:00~23:00(LO)無休
地図:Yahoo!地図情報