距離間が心地よい街、「 神楽坂 」

あちらこちらで高層ビルが立て続けに完成し、注目を浴びている昨今。“最新”を知るには、巨大ビルの存在は大きいかもしれません。でも、どこも同じようなレストランやコーヒーショップばかりが軒を並べていて、どうも魅力を感じません。一度は様子を見に訪れるものの、その後は足が遠のいてしまう。そんなとき、吸い寄せられるように足が向くのは、その場所にしかない”香り”が感じられる街。そのひとつに神楽坂があります。

この街は、日本の風情を感じさせる日本家屋や路地など、守るべき伝統を踏まえつつも、柔軟に新しい風を受け入れてうまく調和している街。そんな印象を受けます。裏路地の小さな居酒屋があるかと思えば、敷居が高そうな料亭もあるし、フランスやイタリア料理などインターナショナルなお店もたくさんある。素っ気なくも馴れすぎない、ほどよい距離間と懐具合につきあってくれる包容力に心地よさを感じます。

この街にこの店あり モロッコ家庭料理店『 アガディール 』

ハリラ
ハリラ(豆のスープ)¥750
さて、このさりげない洒落っ気を感じる街のエスニックレストラン事情(厳密にはフレンチやイタリアン、中華も属しますが、ここでは除きます)はどうなっているのかというと、実はあまり多くありません。地価が高く、外国人が居住するのは難しいということもあるのでしょうか。コリアンダイニングのような居酒屋色の強いお店はあるものの、本格的なレストランとなると、空間を贅沢に使った高級レストランが目につき、庶民的な各国料理店はほとんどないように思います。

そんな中、家庭的な雰囲気を保ちながら、昔から変わらぬ味を提供しているレストランがあります。モロッコ料理店「 アガディール 」
エスニック料理好きのかたなら、一度は訪れたことがありますよね。クスクスを広めた先駆的な存在といっても過言ではない有名店。この地で、私が最初に行ったエスニックレストランということもあるのかもしれませんが、神楽坂のエスニックレストランというと、まず先にこの店の存在が頭に浮かびます。そして、”アガディールはまだやっているかしら?まさか閉店していないわよね。しないでね…”そんなふうに思うのです。
まるで、生まれ育った町でよく通っていた小さなお店が、まだやっているのかどうか気になるのと同じように。