といっても、アルゼンチン料理店でイタリア料理というと、料理人の意図がはっきりしていなくて、どうも・・・とおもわれるかたもいらっしゃるでしょう。
じつはアルゼンチンではイタリア人移民が占める割合が多く、パスタやピザ、トマト系ソースで仕上げた料理を常食しています。ですから、イタリア料理もアルゼンチンのテイストをとりいれて自国の味にしていった、アルゼンチン料理としていまや定着しているのです。
料理を手がけているのは、アルゼンチンの日本大使館で4年間シェフを務めて、その後6年間滞在して腕をみがいたシェフ。一見家庭でも作れそうな素朴なメニューだとおもってしまいますが、料理をいただいてみると、荒々しさのなかにも洗練された確かな技術をかんじる、まさにプロの味だと実感できます。
まず、ぜひ食していただきたいのは、イタリア料理色の強いものではなく、純粋なアルゼンチン料理。家庭料理として最も有名なのが「アルゼンチンの肉包み ￥700/1個」
小麦粉と水で練った生地に牛ひき肉と玉ねぎなどの野菜を炒めたものをスパイスで仕上げ、レーズンとともに包んで焼き上げたものです。いわゆるアルゼンチン風ミートパイといったところでしょうか。お店によっては揚げるところもありますが、ここではオーブン焼き。
焼くことによって、生地の甘みや食感がダイレクトにかんじられ、かみ締めればかみ締めるほど、生地の旨味ややさしい甘味が広がり、料理人の繊細さがうかがいしれます。
ブータンノワールのような背あぶら入り自家製豚の血のソーセージ「アルゼンチン風血のソーセージ ￥900」や「自家製チョリソ入りのレンズ豆の煮込み ￥1200」もそう。
シンプルな盛り付けで豪快さがありながらも、繊細さといいますかやさしさがあるのです。かみ締めずにすぐに飲み込んでしまったら、単なる濃厚なソーセージだとおもってしまうかもしれません。ぜひかみ締めてみてください。後口の濃厚さよりも鼻腔にぬける風味豊かな香りが楽しめますから。
これまでの料理は家庭料理なのですが、お祭りなど特別な日に出される「仔牛のリードボーのグリル ￥2200」などもあります。
アルゼンチンはじつはワイン王国。このお店では、ワインはアルゼンチン産しかおいていません。「仔牛のリードボーのグリル ￥2200」もそうですが、料理はワイン合う個性的な味に仕上がっているので、個性的なアルゼンチンワインによく合います。
自国の料理には自国のワイン。料理人のポリシーがそこにも感じられ、わたしにとってはワインのラインナップも惹かれるポイントとして大きな比重を占めています。
店の雰囲気も料理も普通っぽいのだけれど、洗練されていてどこか違う・・・。
とにかくセンスが感じられるお店です。高級店にも庶民的な店にも多く足を運び、どんな雰囲気の店にも身をまかすことができる女性とふらっと食事をするとき、こんなエスプリのきいたお店で哀愁漂うアルゼンチン音楽に耳を傾けながら、アルゼンチンワインを粋に傾けるのもいいかもしれません。
カウンター席では、年配の常連客がひとりで静かにワインを飲んでいる光景を見かけます。
エスニック料理店というと、音楽が激しくかかるパワフルなお店や比較的若年齢層で占められるカジュアルな店、女性客をねらったようないかにもという商業的なお店が多いなか、落ち着いた雰囲気がありながらも、魅惑的な時間を過ごせるお店というのは希少です。
プチ旅行にでもいったような非日常的な“空間が買える” 『 EL CAMINITOエルカミニート 』
男性に突然、こういうひねりのあるお店に連れて行ってもらえたら、わたしでしたら、 “なんでこんなお店を知ってるの？さすが！！”とおもわずにはいられないですね。
■アルゼンチン料理 EL CAMINITO■
東京都港区東麻布1-12-11
TEL 03-3582-9380 日曜・祝日休み
18:00～22:30（ラストオーダー）
ご予算：4000円～/一人
都営大江戸線赤羽橋駅から徒歩5分
