コーヒー嫌いの夫の場合
出会った頃の夫は、コーヒーというものをまったく飲みませんでした。
あの味が嫌いだったのですって。
だから家でも外でもコーヒーを飲んだことがありません。そもそも熱い飲み物を取りませんでしたね。オーダーするのはほとんどオレンジジュースかミネラルウォーター。
それはそれでいいのです。“好き嫌い”の問題ですから、仕方ありません。
でも、コーヒーを飲まないので、カフェに行くという習慣もなかったのです。
まあそれも仕方ないのですが、別行動ができない時には困ることもあります。
まだカナダに住んでいて、2人で日本に里帰りした時のこと。私たちは東京のニュースポットや観光地によく出かけていました。
ある時、1日中歩き回ってクタクタになり、彼に「ちょっとお茶しない?」と持ちかけたことがありました。とにかく座りたかったし、ノドも渇いていたし……。
彼も一度は賛成したのですが、近くにあった2~3軒のカフェのメニューを見て、全部ダメと言います。ジュースが高過ぎるのです。
確かに日本の喫茶店のジュースって高いんですよね。コーヒーが350円くらいのところでも、ジュースは600~700円したりする。物価の安いカナダに住んでいたせいもあり、特に高く感じたのでしょう。
加えて、彼は日本の自動販売機の数に驚き(多くの外国の方は驚くらしいですよ)、興味を示していた時期だったので、自販機で買うと言い出しました。
そして私にもすすめるのです。
そんなあ……、座って一息つきたいのに……。
それに私、缶コーヒーはダメなのよね……。
しかし、彼の気持ちも分かります。私の提案を言葉通りに受け取ったら、自販機でノドを潤おせるものを買えばいいわけですから。そのほうが安いし、時間もかからない。
本当はそれだけじゃないんだよと言いたかったのですが、もう説明するパワーもなかったので、私は譲歩しました。
思えばその時、何か説明しておけば、後にあんな大ゲンカになることもなかったかも……
1杯のテイクアウト・コーヒーをめぐってこんなことが…… →