国際結婚/国際結婚アーカイブ

帰省/異文化交流と孤独(ガイドの場合)(2ページ目)

国際結婚の帰省は、どちらかにとっては、異文化に飛び込むこと。よほどの事情がない限り、帰省したらパートナーの実家に滞在します。そこでは、ただの旅行では味わえない、その国の本当の暮らしの姿があるはず。自分の母国ではない国に帰省するパートナーの気持ちを想像しましょう。

執筆者:シャウウェッカー 光代

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取り残され状態

国際結婚の帰省

久しぶりに母国を満喫している相手が心から楽しめるよう、心構えが必要です

みなさんは海外旅行などで"周りじゅうの人がまったく知らない言葉を話していて、自分一人だけが分からない"という状況に陥ったことはありますか? 国際結婚では、帰省時にしばしばそういう体験をすることがあるのです。

私事で恐縮ですが、実はスイスに帰省すると、家族の中でそんな事態にときどき遭遇しています。というのも、甥っ子と姪っ子が大きくなって、もうかなりしゃべれるようになってきたから……。当然、家族はスイス・ジャーマン(スイスのドイツ語で、ドイツのドイツ語とはかなり違う)で彼らに話しかけます。そして、急に英語に切り替えるのはなかなか難しいようで、会話がそのままスイス・ジャーマンで流れていってしまうのです。

もちろん、私に話しかけるときは英語にしてくれますし、面白そうな話題でみんなが盛り上がっているときなどは、キョトンとしている私に誰かが必ず英訳してくれますので、そう不自由はないのですが、以前に比べると、家の中では英語よりスイス・ジャーマンの比率のほうが高くなってきたような気が……。

私1人がついていってなーい
(会話の意味が分からないから仕方ないんだけど)

という気持ちに、しばしば陥らされます。ただでさえ、家族の会話というものに、つい数年前までは他人だった人間は、入って行きにくいものがありますが、知らない言語で話されているとなおさらです。

もちろん、スイス・ジャーマンを勉強しようと思ったことはありましたよ。いや、過去形じゃなく、今も思っています。が、スイス・ジャーマン、難しいんだ。話し言葉だけで、書き言葉は存在しないのです。スイスのドイツ語圏の人たちは、読み書きはドイツ語でしているのですよ。つまり、日本語に例えると、ドイツ語が標準語でスイス・ジャーマンが方言のようなものなのです。

だから勉強しようにも、テキストというものがない(最近、チューリヒなどの都市では、在住外国人のために簡単なテキストが出ているようですが)。私が勉強を始めた時は、彼が手書きでテキストを作ってくれていたのです。

せめてドイツ語を知っていれば、スイス・ジャーマンも習得しやすいのでしょうが、私の人生でこれまでほとんどご縁がなかったのがドイツ語。フランス語かイタリア語だったらなあ(おいおい、できるんか?) 

国際結婚には付き物……

まあそんな訳で、みんながスイス・ジャーマンを話していると、私はほんとに取り残され状態。海外旅行中なら、そういうことってよくあるかもしれませんが、国際結婚の場合、まったく知らない言語を話しているのは、義理とはいえ家族。自分だけが中に入れない気持ちを味わうのは必然で、家族の中にいながら孤独を感じてしまうこともあるわけです。

また、妙なことに、まったく分からない言語を話している時の夫や家族は「別人」に見える。今まで近くにいたのに、急にちょっと距離があいてしまったような。だから余計“孤独”を感じるのでしょうね。そんなことを感じ始めた頃は、よく彼に言ったものでした。「もっと英語に訳してよ」

せめて会話の要旨だけでも理解していたいですからね。

ところが、ある日、こんなことが…… 私が感じていた“孤独”を彼に伝えたところ、彼がポツンと「僕も日本にいた時、そうだった」と言ったのです。

断っておきますが、彼は当時既に日本語が話せたので、私のように“まったく知らない言語”の中にいるわけではなかったのですよ。だから、私の場合とは違うと思っていたのですが、いくら話せるとはいえ、家族が普通のペースでポンポン話していたら、彼にとっては知らない言語も同然だったらしいのです。

私も久しぶりに家族と会っているので、彼の様子は見つつも、ついつい家族と話がはずんでしまいます。そんな時、彼が取り残され状態になっていたのですね。ちょっと申し訳ない気がしました。思ったことは必ず話すようにしている私は、その時、彼に不快な思いをさせてしまったか、聞いてみました。

……と、彼の答えは「国際結婚だったら、こういうことは必ずあることなので、別に何とも思っていない」だったのです。 なんだか出来過ぎのような答え。 
 
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