「釣り忍(つりしのぶ)」は夏の風物詩!
「釣り忍(つりしのぶ)」は、すだれや風鈴と並び、昔から親しまれてきた風情溢れる逸品
<目次>
「釣り忍(つりしのぶ)」とは? 歴史・材料・作り方
「釣り忍(つりしのぶ)」とは、竹や針金を芯にして山苔を巻きつけ、その上にシノブの根茎を巻き付けて、さまざまな形に仕立てたものです。シノブは山地の樹木や岩肌に着生して育つシダで、強健で乾燥に強く、水がなくても"耐え忍ぶ"ことからシノブという名がつきました。そのシノブを吊るすことから「吊り忍」といいますが、縁起よく「釣り忍」と書くようになりました。
「金魚としのぶ」 制作:深野晃正/デザイン:岩城美紀 (画像提供:江戸川区産業振興課)※参考作品 |
つりしのぶは、江戸の中期ごろに庭師たちがお得意様へのお中元用に作り始めました。その後、明治から昭和初期にかけて一般にも広まり、家々の軒先を飾るようになりました。風鈴をつけたものも多く、その涼やかな音色とともに夏の風物詩になっています。時代の流れで見かけることが少なくなりましたが、つりしのぶの瑞々しさは、空中に浮遊する小さなオアシスのよう。マンションやビルでも涼しげな風情を感じられますよ。
昔ながらの「屋形船」「灯篭」「亀」「いかだ」などの形をしたものは、素朴で何ともいえないレトロな雰囲気が漂いますが、最近のつりしのぶはインテリア性が増し、金魚まで泳いでいるんですよ(写真参照)。
アートな釣り忍(つりしのぶ)も!
「忍 -NIN-」 制作:深野晃正/デザイン:渡辺ゆうか (画像提供:江戸川区産業振興課)※参考作品 |
今では都内唯一のつりしのぶ園となった「萬園」を営む深野晃正(ふかのてるまさ)さんが制作された作品で、伝統的なつりしのぶを守りつつ、現代生活にマッチするオリジナル作品に意欲的に取り組んでいらっしゃいます。
「井戸」深野晃正 吊るしても、置いても使える人気タイプです(画像提供:江戸川区産業振興課) |
釣り忍(つりしのぶ)の置き場所、育て方、枯れたあとのお手入れ方法
釣り忍(つりしのぶ)は、基本的には吊るしますが、置いて楽しむこともできます。また、お手入れをして育てれば、複数年楽しむことができます。深野さんによると、お手入れのポイントは直射日光を避け、乾いたら毎日バケツにどっぷり浸けること。
秋になって葉が枯れてしまったら、2~3日陰干ししてから新聞紙に包み、ビニール袋に密封保存しておきます。そうして翌年の春に水を与えると芽が出てくるので、手入れを怠らなければ3年は楽しめるそうです。
釣り忍(つりしのぶ)を楽しんでみませんか
釣り忍(つりしのぶ)は自分で作ることもできますが、萬園などの専門店のほか、園芸店、縁日、百貨店の催事などに並びます。価格は2000円ぐらいから。高価なもは3万円以上しますが、売れ筋は2000円~3000円のものだとか。初夏が出荷のピークです。江戸時代から愛されてきたつりしのぶは、現代でも瑞々しく素敵に映ります。吊るして空中のオアシスにしてもよし、置いて楽しんでもよし。風情溢れる夏の風物詩が、またひとつ身近になりそうです。
■萬園(よろずえん)
所在地:〒132-0031 東京都江戸川区松島1-32-11
問合せ:03-3651-3465
【関連記事】