なぜサンタクロースは「赤鼻のトナカイ」のソリをひいている?
【豆知識】ほとんどのシカ科のメスは角が無いのですが、トナカイはメスも角を持っています。オスのほうが角が大きく晩秋に角が落ちて春から生え始め、メスは春先になってから角が落ちます。そのため、12月でも立派な角を持つメスがサンタのソリをひいている、という説もあるそうです。
<目次>
- はじめに:サンタクロースのソリをひくトナカイについて
- エピソード1:勇気凛々。「真っ赤なお鼻のルドルフ」ストーリー
- エピソード2:これも素敵なお話です。ルドルフ誕生秘話
- エピソード3:脱帽です。北米航空宇宙防衛司令部によるサンタ追跡プロジェクト
どれが 「真っ赤なお鼻のトナカイ」なの?
もともとサンタクロースは8頭立てのソリに乗っているのですが、これらのトナカイには全て名前がついています。前から順番に……
- Dasher(ダッシャ-)
- Dancer (ダンサー)
- Prancer (プランサー)
- Vixen (ヴィクセン)
- Comet (コメット)
- Cupid (キューピッド)
- Donder (ドンダ-)
- Blitzen (ブリッツェン)
ところで、どれが有名な赤鼻のトナカイなのかというと、実はここにはいないのです。暗い夜道で困ったサンタクロースが、急遽「 Rudolph(ルドルフ) 」という名前の赤い鼻をしたトナカイに先頭になってもらったから。つまり、特別にお願いされたトナカイだったわけです。
では、なぜ9頭目にルドルフが迎えられたのか? そのエピソードに迫る前に少しだけクリスマスの予備知識をご紹介します。
サンタクロースはこうして生まれた
サンタクロースのモデルは、1700年ほど前に生まれた聖ニコラス(Saint Nicholas。ギリシャ語やドイツ語ではニコラウス)。大変裕福な家に育ったニコラスが、貧乏ゆえに娘達を嫁にだすこともできず、仕方なく娘を身売りしなければいけない親娘の家に、名前も明かさずに窓から金貨を投げ入れたことに始まります(この金貨が暖炉のそばに干してあった靴下に入ったことから、吊るした靴下にプレゼントを入れる風習になったそうです)。
やがてニコラスは司祭になって人々の崇拝を集めるようになりましたが、恵まれない人、特に子どものために金品を与えてくれる聖人として有名になり、ニコラスの心を伝えるために、子ども達にプレゼントを渡す習慣ができました。
聖(セント)二コラス → サンタニコラス → サンタクロース!
はじめはロバに乗っていた
はじめサンタクロースはソリに乗っていなかったそう
それがトナカイのひくソリになったのは、1823年に出版された『A Visit from Saint Nicholas』(出だしの一節から『The Night Before Christmas』と呼ばれることも多い)という クレメント・クラーク・ムーアの詩に、8頭立てのソリに乗ったサンタクロースが描かれていたから。その後、そこにルドルフが加わって、9頭のトナカイがソリをひくようになりました。
なぜ9頭になったのか?いよいよ「真っ赤なお鼻のルドルフ」物語のご紹介です。ムーアの詩で8頭のトナカイとなってからおよそ100年後の1939年に誕生した「真っ赤なお鼻のルドルフ」物語を要約してご紹介します(現在までにディテールの違う様々なバージョンがあります)。
「真っ赤なお鼻のルドルフ」のストーリー
ルドルフ 40周年記念DVD(2004年発売) :1964年、米NBCテレビで「RUDOLPH THE RED-NOSED REINDEER」が制作され、歴史的なヒットとなりました。今でもアメリカの子供たちは、クリスマスになるとこのアニメを楽しんでいるそうです。 |
ところがあるクリスマス・イブのこと、8頭のトナカイ(既にトナカイの英雄として毎年世界中を駆け巡っていました)がサンタクロースを乗せて出発しようとしたところ、突然深い霧が立ち込めてきました。
「こんなに暗くては煙突を探すこともできない……」
サンタクロースは暗闇の中で出発することもできず、困り果ててしまいます。
その時、8頭のトナカイを一目見ようと集まっていたギャラリーが、なにやら騒いでいるのに気付きます。注目の的はギャラリーの中に居たルドルフ。その赤い鼻がピカピカ光っていたからです。これだ!と思ったサンタクロースがルドルフに近づいていくと、赤鼻を笑われていると思ったルドルフは泣いていたそうです。
そこでサンタはルドルフにお願いします。
「君はみんなとは違う。でも、だからすごいんだ。君のピカピカの赤鼻はみんなとは違うけれど、暗い夜道を照らすことができる。だから役に立つんだよ!」
その夜、先頭を走るルドルフの活躍によって無事にプレゼントが届けられ、一躍みんなが一番憧れるトナカイになりました。あんなに嫌だった赤い鼻、コンプレックスでしかなかった赤い鼻のお陰で、世界中の人気者になったルドルフ。この年以来9頭でソリをひくようになり、その先頭で世界中に夢を運ぶお手伝いをしています。
……いかがですか、いいお話ですね。この内容を知ると、あのクリスマスソングが違ったものに聴こえてくるでしょう。でもこれだけではありません。この赤鼻のトナカイが誕生した背景にも、素敵なストーリーがあったのです。
1823年に出版されたサンタクロースと8頭のトナカイのお話もすっかり定着し、クリスマスムードに包まれていた1939年12月のある日、シカゴに住むロバート・メイが娘に即興で創作して語ったのが、「真っ赤なお鼻のルドルフ」のお話。その話が誕生した背景には、こんなことがあったそうです。
「真っ赤なお鼻のルドルフ」のお話はこうして生まれました
「真っ赤なお鼻のルドルフ」原作本。「RUDOLPH THE RED-NOSED REINDEER」by ROBERT MAY。新しいバージョンが子供達に親しまれています。 |
「どうして私のママは、みんなと違うの?」
“みんなと違う”ということ――それは、ロバート本人が身にしみて感じていること。自分自身、小さい頃から体が小さくていじめられ、貧しくて進学することもでず、良い仕事にもつけなかった。おまけに安月給で、治療費のために借金だらけ……そんなロバートは、娘の質問にどう答えたらいいのかわかりませんでした。
そこで、娘を喜ばせたいという一心で、「真っ赤なお鼻のルドルフ」の話を即興で語り始めたのです。自分自身のコンプレックスを赤鼻のルドルフに託し、神様に創られた生き物はいつかきっと幸せになることを、幼い娘、病と闘う妻、そして自分自身に言い聞かせたかったからだといいます。
そのお話が世界に広がったいきさつ
その後、娘にせがまれて毎晩この話をするようになったロバートは、クリスマスプレゼントとしてお手製の本にまとめ始めます。プレゼントを買う余裕のないロバートにとって、それは娘や妻への心のこもった贈り物でしたが、完成を目前にして妻がこの世を去ってしまいます。打ちのめされたロバート。しかし、娘のために本を完成させ、愛する娘を喜ばせました。数日後、会社のパーティーでロバートが「真っ赤なお鼻のルドルフ」を朗読すると、会場から割れんばかりの拍手が起こりました。そうして1939年、彼の会社(大手デパート)から240万冊もの本が(宣伝用として)無料で配られ、この物語が世界中に広がっていったのです。やがて、1949年にロバートの義兄弟によってお馴染みの歌が作られ、クリスマスの定番として愛され続けているのです。
作者の家族への思いが生んだ「真っ赤なお鼻のルドルフ」。勇気を与えてくれる素敵なお話です。
北米航空宇宙防衛司令部 ~ルドルフの鼻を追跡せよ
今、サンタクロースがどのへんにいるのかがわかる!?
ユニークなのがその追跡方法。なんと、ルドルフの赤い鼻から放出される熱を感知して追跡しているというのです!
なんでも、ルドルフの鼻はミサイルが発射されるときに放出するものに似た赤外線を放つためだそうで、通常、他国のミサイル発射などを追尾しているNORADが、総力を挙げて収集したサンタの機密情報を世界中の子供達に提供するとは、何とも粋なはからいです。
司令部によると、サンタは一番早く24日を迎えるニュージーランドなど太平洋地域を皮切りに、日本、アジアの順に地球を一周するそうですが、「まだ謎が多い」とか。
■ NORAD Tracks Santa
毎年クリスマスシーズンになると日本語を含めた6ヶ国語対応HPが更新され、クリスマス・イブにサンタの現在地や到着推定時刻が表示されます(リンク先は年中みられるFBページです)。
サンタ追跡プログラムは1本の間違い電話から始まりました
どうしてNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が、このようなことをしているのか? 事の発端は1本の間違い電話。1955年に『サンタ・ホットライン』という地元紙に、ある店が「サンタさんとお話ができる」と広告したところ、誤った電話番号が掲載されてしまいました。その電話番号とは、NORADの前身にあたるCONAD(中央防衛航空軍基地)のもの。サンタさんに繋がるはずの電話がCONADに繋がってしまいます。ところが、子どもからの電話を受けた大佐が機転を利かせて「サンタは北極点を南に向かったらしい……」と答えたのです! もちろん子どもは大喜び。それ以来、毎年サンタの追跡が行われるようになり、1958年に設立されたNORADにも引き継がれました。子どもの夢を壊さないためのちょっとした嘘が、NORADで働く職員の方々のボランティアで50年間も続く活動になっているとは驚きです。
サンタクロース、ルドルフ、仲間のトナカイ達が、皆さまのもとに素敵なもの(品物とは限りませんね)を運んでくれますように!