かつて、立ち食いそばは、都心の特権だった
牛丼の吉野家のコーポレートカラーは、お馴染みのオレンジ色。私も築地の市場で買い出しをするとき、オレンジ色の看板がよく目立つ「吉野家一号店」の脇を抜けて魚市場に入ります。これがまぁ、いつもよく混んでいて、大人気なんですね。ここは、数年前に米国から牛肉が輸入できなくなった時期も、豪州産の牛肉を使って、他店舗が牛丼の取扱をやめていたにもかかわらず、牛丼を提供し続けていました。
まさしくコアコンピタンス(吉野家ならではの能力)の崩潰。そんな時期に、豚丼、カレー、うどんスキなど、既存厨房のパフォーマンスを活かして、さまざまな新規メニューに取り組んだことは記憶に新しいとことと思います。そんな時代に播いたひとつのタネが、実は最近密かなブームとなっているようなのです。
それが噂の「青い吉野家」。郊外のロードサイドや、駅ナカの立地で増殖しているようなのです。
麺は、十割蕎麦ということなので、店内に茹で釜を置いて、その直上に押し出し製麺器をセットしてあるのでしょう。
天ぷらは、店内で揚げたものを提供しています。きっと、これらの設備を導入するために、郊外型店舗から試験導入をはじめた業態ということなのだと思います。
不確実な時代だからこそ、商機のあらゆる可能性をさぐる展開は、これからますます重要となってくるビジネス戦略でしょう。
私も、東武東上線川越駅上りホームの青い吉野家で、十割蕎麦をいただきました。牛丼とそばのセットを召し上がる人々を、つい新鮮な心持ちで拝見してしまいました。なにしろ、都心のように、1ブロックあるけば数軒の立ち食い蕎麦屋さんがある環境と違って、郊外では駅周辺でしか立ち食いそばを食べられないという現実があります。郊外のファーストフードの選択肢に、「そば」が加わったことは、素直に嬉しく思います。