啜れない私でも、シアワセになれるのでしょうか?
ソバを小粋に啜れないとお嘆きのあなたに!渾身の力をこめてお届けする、そばの啜り方コンプリートガイド。
モデルになっていただいたのは、とあるご縁でシンガポールから来たJaneさん。実は、なかなかの蕎麦通で、神田やぶそばが大好きでよく通っているとか。
でも彼女は、東京ネイティブのように、そばを思うようにかっこよく啜れないという深刻なお悩みをお持ちなのでありました。
わかりました。その悩み、そばガイドが解決してさしあげましょう。
▲slurpを調べてみると…
そもそも「啜る」とは何なのでしょうか、国際的な視野で捉えなおして見ましょう。
slurpを調べてみました。すると、雑音を立ててものを食べる、と、シソーラスには書かれていました。
単に音を立ててではなくて、「雑音」を立ててと書いてありますから、国際的には「イケナイ」食べ方なのです。
▲熱心に東京スタイルの啜りを練習するJaneさん
海外の方が上手に啜れない理由は、大きく分けて二つあると、私は思っております。
ひとつめは、ご幼少の頃から厳しくしつけられてきて、逸脱できないマナーというものが固まっており、「啜る」なんてとんでもないという心理的なバリヤーにがんじがらめになっているというケース。
このケースについては、啜りの指導者は心理カウンセラーとして悩める「啜れない人」の前に登場して、その心理的なバリヤーから解放してあげることが、絶対的に必要です。
幸いJaneは「神田やぶそば」のヘビーユーザーでしたから、私はそばやで回りのお客さんが大きな音を立てて啜っているであろうことを指摘し、『東京では、大きな音を立てて啜ることこそが格好いいんだよ』ということを諭しました。
パラダイム・シフト(価値観の大転換)ってやつです。Janeは小さく頷き、私の提案を受け容れました。
二つめの理由は、どうして啜るのか、啜らなくてはならないのかという、理由が見いだせないことです。
啜るということは、そこに何か特別な利点がなければなりません。
なぜ啜るか? それは、啜ることによって、蕎麦が旨くなるからに他なりません。実は、いいそばは、それだけで結構旨いものなのです。豊富な蛋白質があって、旨さの度合いを測る「アミノ酸スコアも、鶏卵の100に対して92という好成績」なのです。
そばつゆというものは、そもそも旨い麺の旨さをほどよく縁どるためにあります。つまり、旨さで旨さを包むのです。
このとき、どっぷりと漬けるのは、あまりお薦めできません。どっぷりと全部漬けると、麺の間につゆが入り込んで、『蕎麦猪口をスポンジで吸い取ったような』現象が起きてしまいます。
この食べ方は、三つの良くないことを招きます。
□汁を大量に吸って、つゆと麺の味のバランスを毀す
□口の中一杯に麺が滞って、もぐもぐと噛まざるを得なくなる
そして、最後に
□口の中に入りきれなくなった麺を噛み切って猪口に戻す
という、考えるだけでもおぞましい食べ方を招いてしまうかもしれません。
そういうことにならないためにも、ここで正しい啜り方をJaneさんと一緒に学習しておきましょう。