海ほたるのデッキに佇んで、ぐるりと周りを見渡してごらんなさい
▲あいにくの天候だった
目線を真北に転ずると、海岸線にぴょこんと三角形の小さな突起がみえる。もしかしてあれが、スペースマウンテンかいな。南に眼を転ずれば、富津岬に横須賀あたりと、東京湾というものが、想像よりもちっこいものであることが実感できる。穴子も浅蜊も、みんなこの豊穣の海の中で仲良く暮らしていて、築地の市場からおいしいもの好きな人々のもとへと、届けられているというわけだ。
ま、料金はともかく、アクアラインの開通は、千葉へのドライブを京葉道路や湾岸線のピストンから解放してくれた。川崎のジャンクションから千葉に向かえば、交通信号を1ダースかそこいら通過するだけで、郊外路を茂原あたりまでまったりと走れる、素晴らしいドライブウェーを提供しているというわけだ。
そんな沁みるような走りを堪能したあと、しばしの寛ぎと、香りと喉ごしに優れながらも、どこかに余韻を残す、飛びっきりの一枚を出す蕎麦屋が目的地として存在して欲しい。それは皆の切実な願いであったのだが、なんと2007年3月、若き店主による小粋なみせが、茂原の交通の要所という願ってもないロケーションに、彗星のようにデビューしたということだ。
今回築地のガレージからアクアライン経由で自動車の鼻先を茂原に向けたのは、気晴らしがてらのんびりと郊外路を流して、ウワサの店主の蕎麦を手繰ってみたくなったからだ。東名、中央道、関越、東北道など、連休ともなれば大渋滞になることがわかりきっているルートをあえて選ばずとも、素晴らしい場所は山ほどあるというわけだ。