適正な加水量で、粋な麺にするための重要技術
築地そばアカデミーでは、古典的な手打ちそばのテクストブックの用語によらず、新しい視点で語法を捉え返している。現在築地そばアカデミーでは、国際的な出版を前提に手打ちそばの標準メソッドの構築を急いでおり、旧来の慣用的な語法は、論理的につきつめていくと破綻させずに用いることが困難なため、採用しない方針とした。古典的語法との対照は、いずれ着手する計画でいる。
さてこのプロセスは「まとめ=Gathering」と呼ぶ。水回しが完了した粉体(flour以降dough以前の状態)を、次の「くくり=Kneading」プロセスに引き渡すブリッジの役割を担う。
この「まとめ」プロセスは、上限に近い加水率(つまりゆるい玉)で仕事をする場合は顕在化しない。このプロセスが省かれて、いつしか自然発生的に「くくり」が始まってしまうのだ。多加水のそばは、ノシにおいて極度に多くの打ち粉を要求し、切りのプロセスにおいては、ゆるい麺帯を庖丁が引きちぎり、さらには、一旦切れたはずの麺帯が再度癒着しがちとなるので、麺を切ったあともくっつきがないかどうかを入念に点検することが求められる。時には、もりそばであるのに振りざるを用いたくなるようなそばになることすらある。多加水は、すべてにおいて仕事を厄介にしてしまうというわけだ
手打ちそば【まとめ】Gathering
きりっとしたそばに仕上げるための、重要なプロセス▲G01:こね鉢は、まとめのために、ほどよい重量が求められる。あまりにも軽い鉢だと、まとめの仕事のほかに、鉢をおさえつけるという力が求められることになる。 まとめは、水回しを終えた粉をつぶさないように圧力をかけていくという矛盾した動作を行う。