大地にとけ込む点として、その店はある。いったい誰がこんなロケーションでそば店を営むことを企てたというのだ。そして、誰がその店が人口に膾炙して流行することを予想し得たであろうか。まさしくここは、奇蹟の店!なのである。
長い間休業していた「びばいろ」というそば店を、当初切り盛りしていたのが、地元で蕎麦道場を開いていたMさんだ。この店は、訳あって数年間営業を休止したままとなっていた。地元では、再開を熱望するそば好きの声が高まっていた。
現在の店主の竹内さんは、この往年の人気そば店の栄光を蘇らせるべく、築地そばアカデミーの開業総合科を受講して再オープンに果敢にチャレンジする。この目論見は見事にあたって、再開店と同時に一日に40-50人ものお客様を集めるという凄い成績をもたらした。
この話、経営する側も、食べにいく側も十勝のそばへのこだわりを表していて興味深い。
▲妙に懐かしい、そして、旨いそばへの期待が高まる
店舗は、まさしく農家そのもの。店に入るというよりも、知己の家を訪問するというような風情。この気取らぬところがまた、北海道らしくてなかなか良い。
そして、特筆すべきはこの製粉環境である。もとよりこの店舗は本格的な自家製粉を行ってきた。大切に使われてきたこれらの機材は、そのまま若き経営者に引き継がれ、その運用を託された。
びばいろのすべての蕎麦は、この臼により碾かれた原料が供されるのである。
▲びっくりするほど本格的な製粉・製麺環境
店内は、特に飾るでもなく、清潔に掃除が行き届いた民家の居間そのもの。畳に坐せば、心から寛げ、一緒に訪れたお仲間とうち解けつつ蕎麦を待つことができよう。
▲座席は、まさに田舎の農家の居間そのもの。とても寛げる
いったいどんな蕎麦が楽しめるのか、それは次のページで