新樽から自然派へ
10年ほど前にドミニク・ローランのワインと出会った時には驚いた。ブルゴーニュの古老たちを訪ねて買い付けた古木のブドウから造ったワインは桁違いの凝縮感があった。それだけではない。同時にその風味には、オーク新樽の刻印がくっきりと刻まれていたのである。聞けば最上級のワインを熟成させるのに新樽を取り替えて2つ使うという。新樽の芳香と古木の凝縮がせめぎ合うようなそのワインは、ブドウの風味より木の香りばかりだといった非難も含めてワイン業界にセンセーションを呼んでいた。やがて彼は樽香とブドウの風味の調和へと移行し、高い評価を得るようになった。そんなローラン氏が来日した。
ローラン氏は菓子職人からネゴシアン(酒商)に転身したことで有名である。彼によるとじつは父上に菓子職人になるよう強いられたので、在職中はいい思い出はないのだそうだ。本当は料理人になりたかったのだという。
彼は1989年にネゴシアンを始めた。50年から100年といった非常に古いブドウ樹がつける凝縮したブドウを多く使い、二酸化硫黄の添加を最小限に絞り、新樽をふんだんに使い濾過もほとんどしない。こうした造りのワインは、非常に濃厚で奥深い味わいとなった。
いったいどのような味わいの変化が?>>