ワイン/ワイン産地と生産者のレポート

「海外でワイン造り」の日本人が語る(2ページ目)

海外に出てワインを造る人は多いが、華やかなイメージの裏には驚くべきドラマがある。楠田浩之氏とビーズ千砂さんが語る、ワイン生産者の現実とは? ワインの香り成分研究の富永博士も登場。

執筆者:橋本 伸彦

日の丸を背負って

楠田浩之氏の顔
眼光鋭く見つめる
楠田浩之氏は硬派な雰囲気で、「カンフーもこなすアクションスター」といった風貌に見えなくもない。この日、独りで回想するかのように訥々と語り始めた。

これといってワインと関係のない家庭に生まれ、大企業そして外務省での勤務を経て、ワインを造ろうと決心する。「会社や日の丸を背負って働かせてもらって、次は自分で何かやりたくなった」のだという。

白ワインを中心に世界トップレベルにあり、ブドウ栽培とワイン醸造の両方が学べるガイゼンハイム大学のコースを選び、当時義務付けられていた入学前の1年間以上の実習の後「醸造だけでも、1年間でやっつけるのは難しい」というコースを終える。特に化学の知識の必要性を痛感した。

コースでの実習先は教官に指定された。当初は南アフリカの予定がニュージーランドに変更され、マーティンボロ地区のシューベルト醸造所で実習をした。帰国すべきか迷っていた時「細かい事はいいから、こっちに来ないか」と当主に誘われた。

「自分に残された時間を考えると、32歳からがんばっても一生に30回位しかヴィンテージを手掛けられない。どこかで修業するとそこの理念に染まってしまうから、軌道修正が利かない。自分で考えて実行したのなら、失敗してもまだ良い」と考え、独立してワイン造りを始める。

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