ワイン/特別な日の高級ワイン

ペトリュスを造るムエックスのワインを利く(6ページ目)

世界最高レベルの価格をつける『シャトー・ペトリュス』をはじめ、メルロー主体のワインで一流の仕事をするジャン・ピエール・ムエックス社。醸造・経営に携わるエドワール・ムエックス氏と同社のワインを試飲する。

執筆者:橋本 伸彦

最後の3シャトーを利く

シャトー・ラフルール・ガザン2004年
「これはビロードのようなテクスチャーと明快さがある。砂が多い土壌では分かりやすいワインが出来るのです」とラフルール・ガザン2004年についてムエックス氏が語る。

香りからしてほろ苦くスパイシーである。柔かくしなやかなチェリーの果実味とよく熟した渋味がある飲み口なのだが、力強く収斂味があり、ミネラル感やシャープさがアクセントとなっている。ムエックス氏の「このヴィンテージは今飲むには少し早い」という言葉にもうなづける。

シャトー・ラトゥール・ア・ポムロール1998年
ラトゥール・ア・ポムロールはぐっと熟成している。香りに芳香や樽香が力強く、スモーキーな甘草の感じがある。味わいにも熟成感を示す皮革や木質、土の香りや、ドライフルーツの果実香がある。ここは砂利質土壌の高台に畑があるという。

「畑は別々の2区画に分かれています。コート・デュ・ローヌ地方のように、土壌に石の多い畑です。1998年は雨が降る前に収穫を終えたので、熟した果実味や厚みがある」とムエックス氏。

シャトー・トロタノワ 2002年
最後のワインである。「トロタノワとは、古仏語で『憂鬱すぎる』という意味」とムエックス氏。その意味は? 「表土は砂利と石で、その下に粘土質の土。夏はカチカチに固まって耕せず、冬はぬかるみに足が取られる。ブドウの栽培をするのが難しいのです」

2002年の香りは閉じており、ざっくりとスパイシーである。口に含むと、風味がややドライで固いが、エレガントで力強い感じはある。果実味は中程度で少し淡いが、まとまりや上品さがあり、バランスが取れている。トロタノワにしては地味である。

ムエックス氏は「2002年は湿度が高く涼しかったので、いい年ではなかった」と明かす。だが「土壌とブドウがもたらす自然な凝縮感がある。逆浸透膜などを使って濃縮するとワインのバランスが崩れる」と、新技術の応用には慎重である。


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