ワイン/特別な日の高級ワイン

ペトリュスを造るムエックスのワインを利く(4ページ目)

世界最高レベルの価格をつける『シャトー・ペトリュス』をはじめ、メルロー主体のワインで一流の仕事をするジャン・ピエール・ムエックス社。醸造・経営に携わるエドワール・ムエックス氏と同社のワインを試飲する。

執筆者:橋本 伸彦

栽培・醸造・販売をつなぐ

ワインを利きながらのレクチャー
ムエックス氏によると、昔はサンテミリオンやポムロールのワインは、リボルヌ(近隣の町)で消費されていた。彼の両親が造るワインを、祖父はフランス全土そしてベルギーに紹介して成功を収めた。当時は酒商がワインの熟成を管理するなど、ある意味でワイン生産者よりも重要な役割を果たしていたのである。また栽培の重要性に着目したムエックス家は、1950年にマグドレーヌ(サンテミリオン地区)、そして他にラフルールやラグランジュ(ともにポムロール地区)といったシャトーを買収した。

1970年には、カリフォルニア大学デイヴィス校で醸造学を修めたエドワールの父、クリスチャン・ムエックスがビジネスに参加。右岸に21の畑を持ち、最も早い時期からグリーンハーヴェスト(実が青いうちに房を落としてブドウの凝縮感を高める)を行なっていたという。2000年には品質が優れない畑を全て売却し、事業の焦点をテロワールを表現した11シャトーの上級ワインに絞る。

レ・ソンジュ・ドゥ・マグドレーヌ2004年
長らく単独の生産者シャトー・サン・ブリスであった区画のブドウで造られるシャトー・マグドレーヌのセカンドワイン。かつて『サン・ブリス』と呼ばれていたが、2004年産から『レ・ソンジュ・ドゥ・マグドレーヌ』と改称。

レ・ソンジュ2004年の飲み口はエレガントでコクがあり、芳香たっぷりで魅力的である。長い余韻には複雑さと熟成感が溶け込んでいる。ムエックスらしい、ソフトでふくよかな果実味も兼ね備え、いい出来栄えだ。

シャトー・マグドレーヌ2000年
シャトー・マグドレーヌ2000年をひと嗅ぎして、これは上物だと気付く。香り高く、調和もあり、そして深い。先のレ・ソンジュの倍以上の価格だが、香り味ともにエレガントでありながら非常に力強い。また、ドライフルーツや赤い花、土の香りといった印象を残す後味は、長く口中に留まる……。

こんなワインに「2000年は違う。エキゾチックで、歌舞伎の衣装やエルメスのデザインを連想させる」と、ムエックス氏も饒舌になる。「これほどエレガントなのは、石灰岩の上に表土が厚み50センチしかない畑で常に水が1割足りない状態でブドウにストレスを与えているから。そして石灰岩は、女性的な優しさをワインに与える」という。

ムエックス氏とワインビジネス>>
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