ワイン/ワイン産地と生産者のレポート

夫の遺志を継いで造る。レ・マッキオレ(2ページ目)

スーパータスカン発祥の地ボルゲリで、強烈な存在感を示したカンポルミ氏亡きあと、夫人が造り続ける『レ・マッキオレ』。このワインは言うなれば、チンツィアがエウジェニオに捧げるオマージュである。

執筆者:橋本 伸彦

ボルゲリに生まれて

エウジェニオのワインを語る
イタリアでは糸杉の並ぶ風景を歌った詩で知られる小さな村に過ぎなかったボルゲリ。サッシカイアなどスーパートスカーナと呼ばれる秀逸なワインが造られるこの地区にレ・マッキオレがある。卓越したワインを造っている秘密は、ブドウ畑での丹念な仕事である。ワインはセラーで出来るのではない。いいブドウを作ることが前提。それが夫・エウジェニオの信念であった。

彼はボルゲリに昔から住んで食堂を営む一家に生まれ育ち、この地域を知り尽くしている。1983年に水はけが良い上に地下水が豊富な良い畑を手に入れ、改めて7年に渡ってさまざまな品種を試してワインを醸造した。そののち、家の商売をたたんでワイン造りに専念することを決意する。

長年営んできた店に愛着があった親戚は、とんでもない、けしからんと腹を立てて口もきいてくれなくなったが、エウジェニオの両親は店を閉めるというひとり息子を信頼し、やってみなさいと言ってくれた。しかし経済的には両親の援助を一切受けず、独力で切り抜けたという。
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