ピッツァ職人からパン職人へ

小手指の駅から歩くこと数分、いい香りが漂ってくるので、そこにパン屋さんがあるとわかります。この春オープンしたばかりの「パン屋 麦兵衛」の阿部淳さんは、イタリアでピッツァの職人になり、日本に戻りパン職人に転向。生地の味を大切にするパン屋さんです。

店は和のしつらえ。垂れ幕の文字と香りに、道行く人が足をとめる。
平台には次々に焼きあがるパンが少しずつ並ぶ。

パンの種類は十数種類。オープンしたてなのでまだそんなに多くありませんが、焼き上がっては並び、並ぶそばから売れていくその様子には、気持ちのいい活気があります。最初にわたしが感動したのは、チャバタやくるみパンの味と食感です。

「ピッツァ職人も粉の味わいを生かすことを大切にします。その経験は、特にハード系のパンの、風味を大切にする製法の下地になっていますね」

ピッツァ職人時代から、生地のことをもっと理解したい、粉のこと、ミキシングや発酵などの工程のことを勉強したいと思っていた阿部さんは、日本でメゾンカイザーの木村さんに指導を受ける機会があったのだといいます。

阿部さんは最初、料理人を志していたこともあってか、素材への選択眼も確かです。たとえば「チョコバナナ」というパンに使われている、オーガニックのセミドライタイプのバナナ。プルーンくらいの固さで、ナチュラルだけれど凝縮されたバナナの香りと甘味がパンに素晴らしくよく合うのです。食べ応えがある食感にハード系かと思いきや、食パンの生地というから意外です。

阿部淳さん食パン(250円)
チャバタ(小130円)とチョコバナナ(180円)
くるみパン(150円)。麦兵衛のパンはすべてルヴァンフェルメントとイーストの併用。