フロイン堂といえば山食。でも数年前からはパンの種類が少し増えました。 三代目の隆さんが葡萄酵母のパンを焼かれているのです。 新しい今の時代に合わせたパン、ちょっと個性のある自分のパンを作ってみたくなったのだそうです。 「よかったらどうぞ、こんなふうにして書いていってるんですよ」と言ってレシピと日誌を見せてくれた隆さん。 同じパンのレシピがいくつもあるのは、配合を改良していっているからだそう。 日誌には毎日の天候やパンの状態がびっしりと書き込まれていました。 それはお父さんのような完璧なパン焼きの感覚を体内に備えていく着実な手段なのだと思います。 それにしても、胡桃とレーズンがたくさん入った隆さんの田舎パンはとても美味しかった。 山食のように長く愛されていくパンとなることでしょう。 「あと5分」 窯を覗き込んだ善之さんの声に、一瞬空気が緊張します。 ちょうど5分後、完璧な姿の食パンが窯から出されたことは言うまでもありません。 パンを手で捏ねるのは大変な作業。 「息子がだいたい朝一番に来てるんですけど後はもう彼に任してるんです。わたしはボツボツ引退なんですけど。」 と善之さんが言えば、「お父さんもこねることありますよ。今日は一緒に。」と田沢さん。 「地元で将来こんなパン屋さんを?」とお聞きすると、「そうでないとね」と楽しそうに言いました。 「最近ではずいぶん遠くから来てくれるお客さんもあってびっくりするんですよ。 ありがたいことですね。」という 善之さん。フロイン堂は遠くても行きたいパン屋さん。わたしはそう思いました。 東京に帰って、ひとつ増えた習慣があります。 それは天気予報を神戸の分も見ること。 晴れの日も雨の日も寒い日も暑い日も、あの古い頑丈な窯で 体にパンの感覚を備えた職人さんがもう何十年も同じ美味しいパンを焼き続けている、 それを思うと何かほっと安心な気持になるのです。 ■フロイン堂 兵庫県神戸市東灘区岡本1-11-23 TEL 078-411-6686 (パンの予約は当日分のみ。発送不可) 8:00~19:00日祝 定休 前のページへ12※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。