郷土料理「タラのエストフィナード」
見た感じ、モダンガストロミーだが食後感は重く、極めて深い。その意味で驚きを隠せない料理だ。アミューズはごく普通のサラダにニンジンのクリームブリュレ。ドレッシングに仕掛けがあり、豆乳に豚の背脂を仕込み、風味を豊かにさせて食後感にアクセントをつけている。ニンジンのブリュレはありそうでなかった料理。ニンジンは小さく刻まれたものが食感として残り、その甘みは口の中でふわりと拡がる。普通に見えて普通でないアミューズにシャンパーニュはローラン・ペリエ。立ち上がりとしてはとても気持ちがいい。
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ニンジンのブリュレにプチサプライズ |
次は「ガラバール トム・フォンダン」。これはブーダンノワール・コンク村バージョンといったところか。この料理の特徴はひとくちサイズのブーダン・ノワールの下に卵と小麦粉で作られたガレットのようなものが敷かれ、それによりコンクの村を表現しているとのこと。横にはシロップに漬けられたビーツとコンフィチュールが敷かれ、その甘みとブーダンが自然と一体になることにこの料理の面白さがある。素材、調理法、伝統、組み合わせ、意外感など様々な要素がすべて溶け込んだ、ここ最近食した料理の中では極めて完成度の高いものか。
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この料理はランチメニューに組み込まれる |
この黒いのは何だと思うだろうか。これはイカスミのソース。しかしそのソースは単にさらりと塗られただけのもので、生のホタテに絡めていただく料理だ。黒と白を表現し、その裏にはコンクの教会の黒と白のステンドグラスへのオマージュと聞いた。ビジュアルとしても楽しいが、マンゴー、ホタテの柔らかな食感、そこにイカスミが絡み、味覚は一気に中世の巡礼地に飛んでいく。
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黄色の皿も料理のひとつとして食欲を刺激する。ディナーメニューから。 |
タラのエストフィナードは食材のコンポジションが楽しい料理だ。エストフィナードはタラを使った地元料理のことを意味している。ポワレした肉厚のタラの下にはブルーテのようなとろりとした食感のジャガイモのピューレが敷かれ、上にはカリッと揚げたジャガイモが刻まれて載せられる。このピューレにはバジルソースも少々添えられて、全体をぎゅっと引き締める役割を果たす。一つの素材を魚を使って二つに別けて表現する。その完成度をぜひ感じていただきたい逸品だ。
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ピューレの旨味も強烈だ。ランチメニューより |