加賀蓮根とオマール
最初の一皿は香箱蟹(こばこがにと言って小ぶりなズワイガニのメス)とキャビアの下にカリフラワーのクリームが敷かれたもの。そこに浜松産3年育成のスッポンのスープが添えられる。この時期旬の香箱蟹とカリフラワーの優しい味わいが口中に広がり、その柔らかな余韻をシャンパーニュ、ベルエポックの泡立ちが静かに静かに味覚の中枢に流し込む。日本料理であり、フランス料理でもある料理として記憶に残る一皿かも知れない。スッポンのスープも限りなく美味 |
次ぎは寒ブリの刺身。これにピーマンデスプレッド(バスク地方の香辛料)の風味がついた大根おろしと山葵、そしてピキオが添えられる。純然たる日本の旬の味覚にフランス料理がわずかに香辛料という形で寄り添う。ブリの身は厚めに切られ、口の中に入ったときのたっぷりとした食感に複数の薬味が絡み合う。
フレンチエッセンスが仕込まれると刺身も進化する |
さて、加賀蓮根とブルターニュ産オマール海老の団子。加賀蓮根と言えば金沢市内の住宅街の中にある畑でかつて収穫などさせていただいたことがあったが、泥の中から太く、長い蓮根が次々と出てくる様は圧巻だ。水を一切使わずにねっとりとした摩り下ろしを楽しむことができる。メニューの横にはフランス語も添えられるが、レンコンファルシとある。団子に一番近いのがファルシというフランス語なわけだ。ソースはオマールのコンソメを飴状にして絡めたもので、これにはアルザスのリースリング・グランクリュがドンピシャと当てはめられる。ソムリエ石田氏の見事なマリアージュ。
ねっとりとしたソースも忘れがたき味に |
青首鴨のローストにお決まりの葱。そこに山椒が振られ、アクセントにモモ肉のブレゼが添えられる。これはメインディッシュという位置づけではなく、あくまで次の恐るべきメインディッシュの前の静けさと捉えたい一皿か。とは言え、空を飛んでいる鴨の滋味深さは特筆物ではある。
ジビエ特有の噛めば噛むほど滋味深さが感じられる |
さて、食事のクライマックスは上記の料理をすべて吹っ飛ばす位のものが用意されていた。