屈指のワインリスト
久しぶりの料理はより繊細さと大胆さが感じられるシェフらしさが表現されたものだった。ニース風のサラダはオマール、蝦夷アワビ、ホタテが贅沢に仕込まれる。つなぎにツナとジャガイモが挟み込まれ、ふわりと魚介類の間に忍び込む。初夏のニースの街並みを四角い上品な形で表現した愛らしい作品だ。味わいは緻密に組み立てられている |
限りなく美味なソースに言葉もない |
ワインリストについては都内のレストランの中でも屈指のものだろう。長きに亘りブルゴーニュに足を運び、その軌跡がきちんとワインリストに反映されている。値段があがるファインワインほどリーズナブルな価格に設定されており、これぞまさに選びがいがあろうというもの。ワインがほんとうに好きな人が、ワインが大好きなゲストのために作った作見本のような作品だ。
ワインはゆっくりじっくり選びたい |
菊地氏は北海道は函館より大阪の辻調理師専門学校(辻調)へ。「当時はまだ調理師学校も少なく、しかもその中で実績があるといえば大阪の辻調しかなかったから」と迷うことなく大阪へ向かう。貪欲に学ぶ姿勢は天性のものだろうが、辻調において調理基礎技術だけではなく、常に料理を学び続けるという姿勢を得たことが一番大きなことだったと話す。辻調のことについては私も定期的に取材を重ねているが、料理を文化と捉え、その「知の蓄積」は日本の料理界の宝ともいえるものだ。
先ほど「リセット」という言葉を使ったが、出身校の辻調には今年からキャリアをリセットするための既卒者向けの、フランスはリヨンでの研修プログラムが用意されている。半年の期間でシャトーでの研修、そして近隣の著名なレストランでの研修がコンパクトにまとめられているユニークなもの。経験2年以上の料理人とパティシエが対象だ。
日常の仕事に追われる料理人は自ら外に向けて新しい技術、料理、コネクションを作ることはなかなか困難とも言えるが、キャリアのリセットを考えるなら確実なプログラムを利用するのも一つの手かも知れない。
「確かに毎年毎年継続してフランスに出掛けていると、それなりに料理人との繋がりができていきます。ボーヌで修行してきた時代から数えると、それはもう大きな財産です。」と話す。きっとブルギニオンの厨房からフランスのレストランはとても近いに違いない。これまでもブルギニオンを卒業してフランスのレストランへ修行に出掛けた料理人はかなりの数にのぼる。
菊地氏に「2店舗目を出さないのはどうしてですか?」と聞くと、「だって、忙しくなって飲みに出る暇がなくなるじゃないですか(笑)」。一料理人としての頑なな姿勢を軽いジョークでいなすあたりは、まさしくザ・料理人。その姿勢と笑顔にファンが多いのもよくわかるのであった。ちなみに09年度のミシュランガイド東京の一つ星を獲得している。
■ル・ブルギニオン(六本木)
東京都港区西麻布3-3-1
電話:03-5772-6244
営業時間
ランチ :11:30~15:00
ディナー:18:00~23:30
水と第2火休
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