突然ビーフシチューの思い出に浸る
オニオングラタンスープはまさに熟練の賜物。時間をかけて炒められたオニオンとコンソメのやさしさ。その奥には到達するには物凄く時間のかかる技術の極みがかすかに見える気がする。上品な甘さが長い長い余韻を残す。香りがここまで飛んできそうだ |
ひとりですべて切り盛りするシェフ |
幸せな料理。なんかこの言葉が似合う。ギスギスしてなくて、自然体で。何よりもシェフのお顔を見ていると、ほっとするものがある。温厚そうな表情の奥にはキラリと光る視線もあり、熟練さゆえか、よーくお客を見ている。
ご飯が欲しくなるのは何故だろう |
びっくりする料理はないし、作り方を聞きたくなるような新しい料理もない。泡立つモダンガストロノミーとは対極。でも有名店にはない何かがある。
こうしたレストランが日本の食の底辺を支えているのだろうか。シェフとは話はしなかったが外の案内板には銀座の一流レストランで、とある。ソースの具合から見て三笠会館とみたが果たして。
隣のゲストはビールをぐいぐいと飲んでいる。きっとアサヒビールの方だろうか、見事な飲みっぷりだ。実は気になったメニューがあったのだが、それは「唐揚げ」。お隣さんが召上っていたのだが、その唐揚げとチップスの美味しそうなこと。でもフレンチ!と気張って入った手前、オーダーするには躊躇したのだが。。。
ホイルに包まれたハンバーグステーキ |
とにかくビーフシチューは美味しかった。ほっとする味。待てよ、ほっとする味ってなんだろう。いろいろ考えた挙句に辿りつくのは子供の頃に食べた家庭の味なのか。思い起こせば昔は料理人、今は書家になってしまった私の母は年に数回ビーフシチューを作ってくれた。出来立てはソースの香りがツーンときて美味しく、日が経つとジャガイモやニンジンの角が取れてマイルドに変化していく。
酸味が記憶に残っているのはきっと赤ワインをそこそこ入れていたからだろうか。家族7人で囲んでいた食卓。その当時はなんとも思わなかったが、今思えばほんとうに懐かしい。クロノス・ジョウンターが動くならば僅かな時間でも戻ってみたい、30年前に。
ビーフシチューを基点に込み上げるものが出てきてしまう。寒い季節にシチューは心地よい。身体も心も周りの人もすべて温めてくれるはずだ。こういった料理は変ることなく後世に残るんだろうなあ。
料理と時代がほんのり重なるエクセルABE。ビーフシチューをいただきにまた出かけてみたい。
■エクセルABE(浅草・本所吾妻橋)
東京都墨田区吾妻橋2-4-11
Tel:03-3622-1566(小さなお店なので予約が望ましいかと思います)
地図
都営浅草線・本所吾妻橋駅より徒歩1分
東武伊勢崎線/東京メトロ銀座線/都営浅草線・浅草駅より徒歩6分
営業時間
ランチ 11:30~14:00(LO)
ディナー 18:00~21:30(LO)土のみ21:00(LO)
日休
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