フレンチ/東京のレストラン

ラシェリール(白金高輪)(2ページ目)

五の橋商店街に煌く光を放つラシェリール。慈しみ深い愛情を意味する店名はその名のとおり、優しくシンプルなフレンチが特徴で、気品ある大人の時間が楽しめます。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
ランチタイムは明るい陽が入り込む

ポール・ロジェ

白金高輪駅から歩いて10分はかからないが、広尾から歩くよりも近いという微妙な五の橋近辺。目印がないのが残念だが、そんなことはこのレストランとは余り関係がない。ベージュの新しいマンションの一階に掲げられた店名は昼は清楚に、夜は煌々とその存在を放つ。ラシェリールとはフランス語で「深く愛す、慈しむ」という意味だそうだ。

ランチタイムは窓から垣間見える緑やダイニングの花が一層引き立つ。ディナーはほのかな灯りが柔らかくダイニングを照らす。こじんまりとした中に品の良さが感じられるのは白金だからか、いや違う。マダムの存在があるからだ。

フランス料理
どのくらい飲むのか予め伝えておくと楽しさは拡がるかも
マダムはシャンパーニュ・ポール・ロジェが好きなようだ。何か特別な思い入れがあるのかと聞くと、そうではなくて単に味わいが好みなのだという。思い入れがあるのは私のほうで二度もメゾンを訪問し手厚いもてなしを受けたことはことのほか強く印象に残っているシャンパーニュの思い出のひとつ。巨大資本がひしめくシャンパーニュメゾンにあってポール・ロジェもラシェリールと同じく家族経営を貫き、その高い品質と安定性、ブランディング、経営者の魅力、どれをとってもかなり高いレベルを保つ。

そんなわけで前回と同じようにポール・ロジェからスタート。品格を感じるその白ラベルはランソンやアンリオのシャープで際立った酸とは対極の、ボディと味わいで勝負するタイプのシャンパーニュだ。そんな味わいにあわせるアミューズもちゃんと食べさせるものがサービスされる。豚足のクロケット、ナイフを入れると待ってましたとばかり閉じ込められたクロケットの香りが沸き立ち、ポール・ロジェはねっとりとした豚足を溶かすのなんの。

フランス料理
半生の加減がよくわかります
モザイク仕立てになったノルウェーサーモンのミ・キュイ(半生)。それらを取り巻くようにはめ込まれた春野菜は見た目にも美しい前菜だ。最初は味わいに物足りなさを感じたのだが、味覚を注意深く探ると一つひとつのモザイクにギリギリの感覚でしっかりと塩が仕込まれており、食べ進むにつれ印象が深まっていく。もたれることなく次の料理に期待のバトンが渡される前菜のあるべき姿を実現しているひと皿。その間、ロワールのソーヴィニオンは気がつくと空っぽだ。


フランス料理
伝統的なソースはフレンチの醍醐味
太刀魚のソテーに絡めた赤ワインソース。縦に並べた見せ方も楽しいが定番ながらそのソースと脂の乗った太刀魚との旨みには脱帽だ。ああ、旨い。濃すぎず軽すぎず。確かな技術に裏打ちされたこの料理には食べる側に迫ってくる「力」が十分に感じられる。しかし、そう感じれば感じるほどもう少しボリュームが欲しい。客はしょうがないくらい勝手に好きなことを言うものだ。
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