フレンチ/東京のレストラン

キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ(2ページ目)

素材の組合せ、軽やかだが複雑なソース、そして見せ方。現代フランス料理の楽しみが凝縮されたトロワグロの料理は予想をはるかに上回るものだった。ミシュラン東京2008の2つ星。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

キッチン
キッチンが見えるとレストランの雰囲気も明るくなる

アクティブキッチン

エントランス部分には開放感あるアクティブキッチンを眺めつつダイニングに進むように設計されている。シャープな調理器具、新鮮な素材、きびきび動く料理人達の姿はゲストへの心地よいプレゼンテーション。奥のスペースには会津若松の古民家で使われていた古木を天井の梁に見立てた、ウッディな雰囲気が醸し出される。

シャンパーニュはアンリオ。すっきりとした品格ある味わいだ。個人的にも10ある好きな銘柄の一つ。輸入元がサントリーに代わり、これまでどちらかと言う隠れていた実力が強力な販売網という武器を得てレストランで目にする機会も増えてきた。ちなみにシャンパーニュ価格はこの4月よりさらに高騰し、NVでもいよいよ5000円以上という時代に突入してしまった。

リオネル ベカ
シェフはやはりキッチンが似合う
アミューズは2種。2つ目のアミューズは鯖とその出汁をベースにしたジュレ。アミューズで日本を遊ぶ余裕たっぷりのシェフ、リオネル ベカとはどんな料理人なのだろうか。

76年生まれと言うから今年で32歳。21歳でミッシェル・トロワグロ氏の経営するブラッスリー「ル サントラル」に入り、その後「メゾン・トロワグロ」の副料理長となる。言わばトロワグロブランドを継承、発展させる右腕として日本に送り込まれたわけだ。そして見事に2つ星という結果を出している。

フランス料理
Melba de sardine "agro dolce 
鰯のフィーヌ・メルバ“アグロ・ドルチェ“"
鰯の臭みを極限まで抜き去りつつもそれを3種のソース(ピュレ)により海の産物である魅力を極限まで高めるその存在感。パプリカ、トマト、オリーブはシェフの生まれたプロヴァンスを表現する小道具か。素材がピューレによって味わいを変化させる見事な一皿。


フランス料理
St Jacques “saltimbocca”
帆立貝の“サルティンボッカ”
サルティンボッカとは口の中に飛び込むという意味。ビジュアル的には皿が大きく見えすぎてしまい、その完璧ともいえる味わいのバランスと驚きが盛られた料理がやや小さく見えてしまうのはいささか残念だが、その料理にナイフを入れて帆立を口に含んだときにはそんな小さな偏屈的視点はどうでもよくよくなってしまう。添えられたトリュフが憎いほどの香りを振り撒き、帆立が口の中に飛び込んだあとの余韻を実にうまく伸ばしてくれる。
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