フレンチ/東京のビストロ

ビストロモンペリエ(蔵前)(2ページ目)

暑い夏の午後、その扉を開けると南仏はモンペリエの爽やかな空気が流れていた。ビストロの看板を超越する気品ある料理の数々に、私は驚きと和みが交差した気持ちになった。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
何気ない料理だが多くの旨みが隠されている

旨そうな予感

ランチの開店と同時に入ったのだが、カウンターと12席ほどの小さな店内にスタッフが6人も!! カウンターに座ったのだが、その数にちょっとたじろいでいると、シェフが「研修生を入れているもので賑やかなんですよ」と。そうか夏休みということもありインターンなのかと納得。外の暑さもあり早速ソーヴィニオンのグラスでいただく。

インテリアはこざっぱりとした綺麗なインテリアだ。店の真ん中にカウンターとそのすぐ奥にキッチンがあり、気持ちがいいほど中はほぼ丸見え。サービスの方もテキパキテキパキ、つまり客のために次に何をしたらいいか、ちゃんとわかっているようなところが気持ちいい。

アラカルトの価格帯が1000円以下から2500円程度というところからビストロという名をつけているようだ。早速前菜のコンソメジュレのサラダ仕立てをいただく。中に隠された半熟卵とコンソメジュレのお絡みが、暑さボケしていた味覚を呼び起してくれる。

フランス料理
胡椒とマスタードに絡めるとこれまで感じたことのない味わいが広がる
カウンター越しにシェフが研修生の女性にサラダへの塩の振り方、盛り付け方などなどを丁寧に指導。研修生の真剣なまなざしとぎこちない手の動き、シェフの助言、具体的な指導、そして暖かなまなざし。

多分これは研修生だから体験できること。お金をもらって稼ぐ現場仕事はもっと厳しいぞ、なんて思っていると前菜が到着。手間隙かけたコンソメジュレの味わいの深さはこれぞベテランの味わい。旬のトマトから湧き出る甘さや酸味が程よく溶け込み、暑さを忘れさせる一品だ。次に、追加でいただいた豚リエットのマスタード添え。

リエットは脂身が多いタイプのもので、最初はねっとり感がどうも舌に馴染まなかったのだが、マスタードを添えると味わいが一変。付け合せのサラダは前の皿と同じだが、僅かな胡椒とマスタードで大きく変化させるテクニックもさすがだ。ただし好き好みから言うと私は肉が多いほうがいい。

メインはサーモンのリゾット添えを。マスタードソースはバターの比率が高く、若干の甘さを感じさせるものだ。リゾットとの相性も良く一気に食は進む。デザートはバナナのムース仕立て、ヨーグルトのソルベ添え。これもシンプルだけに手抜きができない職人的デザートだ。もちろん味わいは外の暑さを忘れさせてくれるもの、そしてずっとここにいたいな、とお思わせてくれるものだ。

フランス料理
日本人がほっとするフレンチの味わいをシェフはよくご存知のようだ。
がっつんというビストロ料理というより上品で繊細なフランス料理。これはアピシウスで仕込まれた技術の賜物に違いない。高級食材ではなく、安価な日常的に手に入る素材を料理人の高い技術で最高の料理、つまり作品に仕立て上げる。それには仕込みに多くの時間を割かなくてはならない。これを一皿1000円台で実現してこそ日本のビストロではないだろうか。

今回はランチの訪問であったが、ディナーであっても期待を裏切ることはないだろう。ランチは美味しいが、ディナーで外す店はそう多くはないのである。

ワインをお替りして、酔いも少し回りだした。外は相変わらず暑い。
私は「何かきっとおいしそうな予感」が当たったことにとても満足しながら蔵前の路地を歩き駅に向かった。

ビストロ モンペリエ
東京都台東区蔵前3-16-7 地図
Tel:03-3864-1611
ランチ :11:30~14:00 1200円~
ディナー:18:00~22:30 5000円程度か
日祝休


今回の話を赤坂はコムアラメゾンの涌井シェフに話したら「えっ、しまさん、モンペリエ知らなかったんですか、遅いなあ、あそこはすごいいいですよ」ですと。
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