小田急線は経堂駅
小田急線は経堂駅から農大通りを進んだところに小さなカウンターフレンチがある。地元の人はご存知の方も多いだろう。その料理人は20年も前の1985年、当時から賑やかな学生街である下北沢にル・グラン・コントワーを開店し、実に堅実に日本におけるフレンチを広めてきた重鎮、菅沼豊明氏だ。店内からこぼれる灯りが印象的 |
下北沢店は高級感ある内装、経堂駅前店はお気軽系な雰囲気、そしてコントワー松喜はフレンチ懐石と、どれも個性が異なるところが面白い。考えてみると料理人は、最後はビストロ料理や、ビジネスをそう意識せず本当に自分の好きな料理に行き着くのだろうか。
1997年に商店街の奥に開店したコントワー松喜は高いレベルで和とフレンチを組み合わせた料理が特徴だ。店の看板にはフレンチ懐石と書かれてあるが、そう難しく考えることはない。メニューもワインも手書きで気さくなもの。しかしサービスはてきぱきと、そして暖かい。
実に見事な江戸前の握りだ。 |
寿司を握り始めたシェフ
前菜と魚料理が終るとシェフはカウンターの中で寿司を握り始めた。その一連の動作にはただ見とれるばかりだ。フレンチと寿司の組み合わせなんて普通のレストランでは有り得ない。この小さなカウンターでは菅沼シェフによる、きっとご自身が本当に好きであろう料理がサービスされる。それもすぐ目の前で。軸がぶれていないと言うか、ぶれようがないその素朴な料理は実に旨い。こういう時は明らかに料理からエネルギーをもらっているのでこちらも気分が高揚してくる気がする。食前酒を楽しんでいると、その先にはオレンジの皮を丁寧に剥くシェフがいる。香りが漂いそれがスパークリングワインの香りと重なるが、それも思惑通りならばなんという自然な演出だろうか。
シンプルゆえに印象に残るデザート |
実に自然でゆるやかな時間が流れる居心地のいいレストランだった。
こうした住宅街の中にあるレストランはまだまだ少ない。地元の人や沿線にお住まいの方々に愛されるフレンチが増えてこそ、フランス料理の日常が広がっていく。すでに3店舗を構え、長きにわたり実績を積んできたシェフの今の気持ちが「フレンチをもっと日常的に」という思いがあるのだろうか。そんなことを考えながら、ほろ酔い気分で帰り道を急いだ。
■コントワー松喜
東京都世田谷区経堂1-5-10
03-3439-0133
ランチ 12:00~14:00(L.O.14:00)
ディナー 17:00~21:00(L.O.21:00)
地図はこちら
ル・グラン・コントワー下北沢
東京都世田谷区北沢2-15-15末広ビル2階
03-3410-7645
ル・グラン・コントワー経堂店
東京都世田谷区経堂2-3-1 2階
03-3439-9955