03年12月にひっそりと開店した、大人のためのレストラン、アルバス。
有楽町の名店として名を馳せたアピシウス時代の仲田氏について私はほとんど知らない。逆にこんな客は珍しいかも知れない。私達4人が訪れたのは土曜日だったが、かつてのアピシウス時代のお客様らしき品のいいご家族、ゆったり寛ぐ老夫婦。平日とはちょっと雰囲気が違う。
メニューはご覧の通りコースは一つのみ。でも練りに練られたまさに「モノポールメニュー」とはこのことだろうか。カウンターで思い思いの食前酒をいただきながら、これから繰り出される料理の夢を見る。なお、メインの鴨が苦手という友人のリクエストも快く聞いてくださり、一人だけ牛頬肉の赤ワイン煮込みに変更。
小さな空間故の落ち着きと気品をしっとりと漂わす店内。オーナーである仲田氏の思いを伝える輝くばかりのワイングラス。そしてそしてワインリスト。
美味しい白ワインが飲みたいという友人達のリクエストで、ソムリエールとしばし相談に相談を重ねる。
シャサーニュ?やっぱりピュリニイ?とやっているうちに僕達が辿りついたのは、ピュリニイとシャサーニュにまたがるフランクリュ、モンラシエ。このワインを選んだところから私達の気持ちは世界最高の白ワインと向き合うための準備を始めた。
赤ワインは仲田氏と相談。89のデュジャックか78のアンポーか楽しいやり取りが続いたが、最後はモレサンドニの気まぐれ頑固な生産者として有名なロベール・グロフィエのボンヌマール91に到達。その時、仲田氏の表情はやや固く、明らかに進めていない雰囲気も。モンラシエの次の赤となると、もっと熟成感が感じられる方が良かったのかも知れない。自分で熟成感って言っておきながらのこの選択は今となってはちょっと情けないか。ちなみにボンヌマールは果実味が凝縮した10年以上の熟成を経ても非常に強いワイン。
単一メニューゆえにワインの選択肢は狭くなるかもとの思いも、白ワインとの組み合わせ、各人の好みなどによって的確な助言を下さる、まさにザ・ソムリエの姿がそこにある。