フレンチ/東京のレストラン

【閉店】シラノ・ド・ベルジュラック(2ページ目)

フレンチの日常をしっかり提供し続けるレストラン、シラノ・ド・ベルジュラック(初台)。ここなら毎日行っても飽きない料理が楽しめそうだ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

そのレストランはまるで「おうち」のよう。玄関あけたらそこはフランスの食堂という言葉がぴったりの空間だ。特にインテリアが凝っている訳でもなく、高そうなワインのボトルが並んでいることもなく、毎日食べても飽きないフランスの日常が凝縮されている。それも淡々と。

テーブル席が5つくらいの小さなスペース。女性同士で賑やかに食事というシーンが多いと聞くが、男性同士で豪快に食事を楽しむ客がいても居心地は悪くなさそうだ。この日もほとんどが女性客、しかし奥にはスーツを脱いで寛ぐ男性グループの大きな背中もしっかり見える。

前菜、スープ、メイン、デザート、コーヒーと続くメニューは3800円のプリフィクス。ほとんどが3800円だが、メインディッシュの肉か魚の種類によって値段が変わる仕組になっている。メインの肉(魚)料理の後ろにその料理を選んだときの値段が入っている。+300円とか+1000円といった表記の仕方よりも総額で表示されている方が何故かとても良心的に感じられ、そしてわかりやすい。

定番と書かれた「ウニと野菜のパートフィロ包み ホタテ添え」はふわりとした素朴な味わい。ボリュームもしっかりで嬉しい限りだが、塩加減がやや緩く感じられたのは多分個人的な好みの問題か。ボリュームはしっかりだが、料理全体の塩の効きは抑え目にしているようだ。近くのカスケットとはその意味で対照的。カスケットが塩を効かせたエッジの鋭い料理とするならシラノはやさしい緩やかな味わいの料理と言える。

スープが間に入っているが、寒い季節に暖かいものがあるのはとても嬉しい。それも3種類のスープの仕込みには素材と時間をかけていることが手に取るようにわかる。朴訥とした真面目な印象だ。夏にはきっと冷たい野菜のスープなどが並ぶのだろう。季節感を感じられるほっとするスープ、最近はコースの中に入れるレストランも多くなった気がする。

ワインは幡ヶ谷の花田屋酒店セレクション。幡ヶ谷界隈では非常に誠実なワインショップとして有名なところだ。90年のグリュオー・ラローズが1万1000円位でオンリストされているかと思えば1967年のボルドーワインも確か1万円以下で楽しむことができる。むろん4~5000円程度で良質のワインが申し分なく揃う。ちょっとしたサプライズもあり、選ぶのが楽しいワインリストだ。

3800円という値段にフレンチの日常があるような気がするのは私だけだろうか。本音を言うとワイン飲んで一人5000円というのが理想だが、東京ではなかなか難しいのが現実。ワインはヴァンドペイをカラフで結構、グラスも自分で注ぎながら煮込み料理をほおばりたい。シェフもサービスもマダムも客と一緒にワイワイガヤガヤ。そんな日常を楽しめるレストランがもっともっと増えていい。

帰りがけに垣間見たシェフの仕事を終えてほっとした表情に、職人としての生真面目さを改めて垣間見た気がした。

シラノ・ド・ベルジュラック、この淡々として真面目なレストランにはフレンチの日常がたっぷり。友人同士普段着で気兼ねなく飲み食いしたいときには絶好の一軒である。

シラノ・ド・ベルジュラック
渋谷区初台1-43-2吉永ビル1F
03(3374)0078
朝11:30~昼1:30,夜6:00~夜9:00(LO)
月休(祝日の場合は営業)
京王新線初台駅東口から徒歩3分程度
*3800円のコースお手ごろなワインを飲んで5~6000円程度か。
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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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