【惜しまれつつ閉店となりました】
新宿という場所から想像するものは歌舞伎町、高層ビル。なんとなくごちゃごちゃしたところである新宿からフレンチを想像するのはちょっと難しいかもしれない。
今回ご紹介するヴァンヴィーノブリュレは、そのごちゃごちゃとした新宿のど真ん中にある。お店は新宿駅東口地下からみずほ銀行(旧富士銀行)の出口から出てすぐ。向かいはバーニーズニューヨークだ。ビルの周りは雑然としているが駅から近いのはとても便利で安心。もちろん店内はとても静かである。
ここは豊富なワインとビジュアライズされたとてもわかりやすいワインリストが有名な、いわゆるワイン系のレストラン。特筆すべきはブルゴーニュワインのラインナップだ。希少価値の高い生産者のワインが揃い、オーナーである今井氏の半端でないこだわりを垣間見ることができる。5000円前後から数十万円のものまで揃うが、自信をもって6000円程度の予算で好みのものを選んでもらうようにしたい。
私はこれまではこのお店を食事が終わって、帰りに一杯、という使い方をしてきた。ところが料理も、と言っては失礼だが、これがなかなかイケル。イタリアンっぽいメニューが並ぶが、それよりも「フランス産茸ジロール、トランペット、シャントレルのソテー」や「フランス・シャラン産鴨のロースト」「野菜の軽い煮込みコンソメ・スープ仕立て 卵の黄身といっしょに」といったフレンチメニューの方がそそられる。
店内はやや暗めだが(この写真は実際より暗め)、席に座ると食事をするにはちょうどいい照明に思えてくる。正面には長いカウンターがあり、その向こうには溢れんばかりのワインが並ぶ。テーブル席、カウンター、そして軽く仕切られた半個室スペースあり、それぞれから見える風景が微妙に異なる。
さて。オーダーしたのは「牛頬肉の贅沢な赤ワイン煮込み」。カベルネソーヴィニオン種のワインでじっくりと丁寧に煮込んだほほ肉は箸でいただけるほど柔らかく、でもその繊維はしっかりと牛肉の旨みを食感に訴えてくる。強すぎず、弱すぎず、そう、とても丁寧に気持ちを入れて作った一皿だ。ソースがとろりとかかった料理ではなく、あくまで肉の旨みを伝える料理。
「スペイン産山ウズラのロースト」はほどよく身が締まり、ローストの加減もちょうどいい。塩加減もワインが進むように設定してあるかのようだ。ちなみにワインはブルゴーニュはメオカミュゼのACブルゴーニュ(6500円)。ゆるゆると香り立つこのワインは硬すぎず、濃すぎず、このクラスでは珠玉のワインではないだろうか。言うまでもなくこの料理にどんぴしゃり。
ワインはとにかくものすごい数のラインナップだが、実はそこには目をくれずに料理を楽むつもりで出かけて、そのついでにACブルゴーニュクラスのワインを選んでもらう。こんな楽しみ方にしっかりと応えてくれるレストランでないかと思う。
オーナーの今井氏はホームページでワインの輸入業者のランキングをつけている。私もその内容や姿勢に少なからず影響を受け、銘柄やヴィンテージでワインを語る前に、そのワインがおかれてきた状態にもっと神経をとがらせるべきであると最近やっと考えるようになった。
住 所:新宿区新宿3-25-9モアビル5F
電 話:03-3352-1257
営業時間:18:00~4:00(日曜日定休)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。