インタビューの前日、選手の母体の指導者を招き、NTに対する意見や要望を出してもらったという。NTの合宿や遠征は年間100日から120日。3分の2以上は母体での練習であり、意思の疎通がなければレベルアップもままならない。NTでは今後、どのような強化方針で進んでいくのか。
今回の合宿では、フリック(払い)レシーブからの4球目を重点的にやっています。フリックの技を多彩にして、レシーブがうまくいった場合は4球目を狙っていく。うまくいかなかったら、4球目をブロックしてから6球目を狙う。4球目をどのように待つかを絞り込んでいく練習ですが、日本選手はブロック力がないためにラリーが恐い。このあたりが課題ですね。
ふだんの練習とナショナルチームの合宿にズレがあってはいけませんから、母体の監督、コーチを呼んで意見や要望を出してもらいました。僕のほうからも、次の合宿までにはこういう練習をやっておいてください、ということも話しました。母体と我々としっかり意思疎通しておかないと、一番困るのは選手ですから。
以前、僕の大学の選手が遠征から帰ってきたら、ラバーが変わっていたことがあったんです。もちろん替えてもいいんですけど、連絡がないために僕はびっくりする。
僕のところから17人が世界選手権のメンバーに選ばれていますから、その時々の強化部の方針とか練習方法とか全部耳に入るわけです。なぜもう少し母体の意向を取り入れてくれないのかと、ずいぶん食ってかかりましたしね。だから選手を強くするためには、母体とのズレはなくそうと。
いろんな意見が出ましたが、多かったのは、プロツアーに行く選手が決まっている、別の選手にもチャンスを与えたらどうか、ということですね。だから、大会のグレードの差によって、小さい大会には準ナショナルチームを派遣したらするということも考えていかなきゃいけないと思います。
ただ、国際競争力を考えると、トップの3人ぐらいは集中的に遠征させて力をつけさせなきゃいけない。結局、同じ選手を派遣してれば「メンバーを変えろ」と。メンバーを変えて行くと「トップが強くなれない」と。どっちにしたって批判が出てくるんですね。
だから僕は、僕がやっているからじゃないんですけど、誰が出ても重箱の隅をつつくというような卓球界の旧態依然とした体質が変わっていかないと、日本の卓球は100年経ってもダメだと思いますよ。こう決まったんだから、みんなで後押ししようじゃないか、というふうにならない限りね。
ともかく、外野にいたときに疑問に思ったことは、内野にはいってもやらなきゃいけない。立場が変わると人間がコロッと変わる人もいますけど、僕はそうありたくないと思っています。(了)
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