「精神的に不安定というほどではなかったけれども、過緊張からか、ジャッジの動作がスローになっていったということは考えられますね。それで審判本人に確かめたところ、代わってもらえるなら代わってほしい、と」
10分ほどの中断のあと、新たな審判員のもとで、2-2から小山のサービスで試合が再開された。そのとき、またもや「事」が起こった。
「フォルト!」
小山のサービスに対し、主審の声が場内に大きく響いた。
小山はわけがわからないという様子で、新たな主審に詰め寄った。だが、主審は小山の抗議に耳を傾けるそぶりを見せず、ベンチを指し示しながら、「座れ。いいから座れ!」と命じたのである。
それが引き金になったのか、ベンチに戻った小山は感情的になった。
「もういいです。もう試合しません。やめます。もういいです。もう絶対許さないです。もう試合やめます」
何度もそんなふうに喚きながら、ラケットをケースにしまい入れ、トレーニングウェアを着込んだ。
場内が、ざわめいた。関係者に場内説明を促された主審はマイクを握り、「フォルト」をとった理由をアナウンスした。「小山選手のサービスのトスが5センチぐらいしか上がっていなかったのでフォルトにしました」
主審と副審がつく場合、いきなりフォルトをとられることもある。ましてや小山のサービスには、1セット目にイエローカードが出されている。主審の判定について責めるべき点はまったくない。
だが、対戦相手の末益はこう漏らす。「抗議のあとの1本だから、私に味方してる、審判の人が味方してるっていう感じで」